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エンタメ 読書人の雑誌「本」
この思いっきり熱い純愛小説が「自分史上最大」の労作になろうとは
最新刊『幸福のパズル』によせて

テンション高めで書き始めたが…

「ドラマチックな恋愛小説を書いてみませんか?」編集さんからそんなお話をいただいたのは、4年程前のことになる。

次々にヒロインに苦難がふりかかり、運命に翻弄されながらも一途に愛を貫いて行く純愛ストーリー? そういえば、最近そんな直球の恋愛小説やドラマにとんとお目にかかっていないような気がする。

いい! 書いてみたい。思いっきりストレートで熱い純愛小説!!

舞台は、大好きな葉山の町にしよう。湘南に住む私は、これまでに鎌倉、逗子を舞台にした小説を書いている。鎌倉、逗子とくれば、次は当然葉山だろう。主人公の職業は何にする? そうだ。仕事内容や生活をリアルに描けるように作家にしよう。

主人公の彼は、葉山のクラシックホテルの御曹司ではどうだろう? 箱根の富士屋ホテルのようなクラシックホテルに、昔から憧れていたのだ。

テンションが上がって、一気にプロットを書き上げた。が、他の小説や漫画の仕事があったために、実際に執筆にとりかかったのは3年程前のことだ。当初は、3ヵ月程で書き上げる予定だった。これまでは、だいたい1~2ヵ月で一作を仕上げていたし、どんなに時間がかかっても3ヵ月が最長だった。

今回の小説は今までの作品よりはかなり長編になりそうだが、それでも集中すれば3ヵ月程で完成するだろうと見込んでいたのだ。が、甘かった!!

 

幸福のパズル』という小説は、私には思いの外手強かった。登場人物も多いし、エピソードも盛り沢山。そもそもドラマチックな物語を目指していただけに、次々にとんでもない事件が起こる。まさに、ひと昔前の大映ドラマのようなジェットコースター展開!

プロットはノリノリで楽しんで書いたものの、実際に書き始めると、これは一筋縄ではいかないと気付いた。ベタな設定や事件てんこ盛りのドラマチックストーリーは、ヘタをすると箇条書きで話を追うだけの、リアリティのない夢物語になってしまいそうなのだ。

この小説を成立させるためには、登場人物ひとりひとりの気持ちと、真剣に向き合わなければならないと思った。物語の舞台やディテールを丁寧に描くことが必要だと思った。