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社会保障・雇用・労働 週刊現代 日本

「働き方改革」便乗コストカットにサラリーマンが漏らす嘆き節…

もっと残業したい、もっとカネが欲しい

プレ金なんてとんでもない

政府が進める「働き方改革」に対して、第一線で働く現場のサラリーマンたちからはこんな嘆き節が漏れる。

「今は残業を毎月80時間していて、残業代は20万円を超えています。これで住宅ローンを返していて、さらに子供たちの教育費が月に10万円でこれも残業代から出しています。それでも毎月の給料では赤字になるので、ボーナスでやりくりしている状態です。

それが残業規制で、年間960時間だった残業が、720時間までに制限されるわけですよね。その分、残業代が減るので、これまでと同じ支出だと生活が成り立たなくなります」(大手自動車メーカー社員・30代・工場勤務)

「私は管理職なので、残業代は関係ないのですが、やはり部下たちをやる気にさせるのが難しくなっています。よく『先輩たちの時代は好きなだけ残業代が稼げてよかったですね』と嫌味を言われます」(中堅証券会社社員・50代)

「プレミアムフライデーなんてとんでもありませんよ。早く退社して飲みに行くなんて、そんな金銭的余裕はありません。第一、そんなことしていたら仕事が回らなくなる。

工場勤務の同僚はみんな子供を塾に通わせているので、ウチも負けられない。残業をして家族のためにおカネを稼ぎたいんです」(大手機械メーカー社員・30代)

「営業先は一般の人ですから、相手の仕事が終わってからだと、打ち合わせが夜の8時になることもザラです。

これまでは朝に出社して、夕方からは仕事をして相手を待っていたものですが、今後は夜に打ち合わせがあるときは午後出社するようにと通達された。午前中に営業所で別の仕事をしていて、遊んでいるわけではないのに。その結果、もちろん給料は減りました」(大手ハウスメーカー営業・30代)

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政府は「働き方改革実現会議」で労働者の残業を年間720時間(月平均60時間)、繁忙期の上限を月100時間未満とする罰則付き上限規制案を決定した。

彼らの進める「働き方改革」の背後には、経営側による残業代のカット―つまり人件費削減の魂胆が透けて見える。

神戸大学大学院経営学研究科准教授の保田隆明氏が解説する。

「長時間労働を規制することで大きな打撃を受けるのは現場で働く人たちで、彼らの賃金カットにつながります。一般のサラリーマンの給与は残業代が大きなウェートを占めているのが現状です。こうした中で長時間労働を規制すると、大きな混乱を引き起こすことは避けられないでしょう」

実際、連合総研が昨年10月に2000人の労働者を対象に行ったアンケートでは、「残業手当を生活の当てにしている」との回答も多く見られた。働き方改革で残業代が削られれば、彼らの生活設計が狂いかねない。

「日本の人口は少子化で減少が止まりません。政府は対応策として労働者の生産性を上げることを狙っているのでしょうが、賃金がカットされて、現場で働く従業員の生産性が上がるかは難しい問題です」(保田氏)

 

経営コンサルタントの中沢光昭氏は、働き方改革に便乗する経営陣の思惑をこう解説する。

「経営が思わしくない場合、ほとんどの経営者が考えるのは人件費の削減です。残業の削減はやりやすく、表立って社員の側も文句は言えません。働きすぎは良くない、家族との時間を大切にすべきだ、いい仕事をするにはワーク・ライフ・バランスが大事ですよ、という正論には異論を唱えられませんから。

しかも、政府が上限を法律で規制したら、コンプライアンス上も問題があるから、と大手を振って残業を禁じられる。経営陣が『集中して働いて、定時のうちに仕事を片付けよう』と言うと、従業員は決まってみんな浮かない顔をします。収入が減るからです」