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近い将来、人工知能も「学校」に通うことになるだろう

汎用人工知能の可能性と課題
「最近耳にすることの多い「汎用人工知能」とは何なのか」「なぜそれを作る必要があるのか」などについて聞いたチェコ発のスタートアップ「GoodAI」CEOインタビュー前編。後編では汎用人工知能の使い道や実際のビジネス分野での可能性などを探る。

汎用人工知能は何の役に立つのか

金井 汎用人工知能があらゆる問題の解決に役に立つのであれば、それが完成したときには何に使いたいですか?

マレック シンプルな答えとしては、「全て」です。まず、経済的利益を得るために利用可能です。一般の人や企業が問題解決に利用することで価値を生み出すことができます。

そうして生まれた資金で工場を作り、人工知能自身を向上させることに使います。そうすれば、科学の進展を自動化することができます。

科学の研究や探索をするのは人間だけではない時代が来ます。AIの行う科学では、実験のスピードも、一度の研究で扱えるデータの量も格段に上がってくるでしょう。そして、科学の発展は大爆発を起こすことになります。

金井 そうなると、未来の科学者はコンピュータ上のプログラムとなって、その人工知能の科学者が無数にタダで働いてくれているような状態になりますね。

マレック 現在の(人間の)科学者は知能にも人数にも限界があります。世界には70億人いますが、全員が科学者になるわけではありませんし、科学者を育てるには何年もかかります。

金井 人工知能が科学をやるようになったら、人間の科学者の役割は残っているのでしょうか? 科学者も人工知能に職を奪われる職業の1つとなるのでしょうか。

マレック 科学者にかぎらず、今後人間はどうやって人工知能と融合していくかを考えなければならないでしょう。自分とAIが1つの存在となるのです。

もし、自分より他の誰かの方が優れていては、経済的な価値は低くなってしまいます。だから、人工知能と合体してしまうしかないのです。そういう時代の到来にはまだ時間がかかるので、今のうちに準備をしておくことができます。

金井 次に、あなたは汎用人工知能を作るまでの道のりを「ロードマップ」を作って公表していますが、それはどのようなものなのでしょうか?

マレック 我々のロードマップには2つ重要なポイントがあります。1つはAIのアーキテクチャー、もうひとつは我々が「カリキュラム」と呼んでいるものです。

先に後者から説明します。カリキュラムというのは学習課題を集めたもので、AIにスキルを教え込むのに使います。うまくAIの学習用カリキュラムを組むことで、簡単なものからより複雑なものへと段階的に学習ができるようにしようとしています。

このようなプロセスをグラジュアル(段階的)ラーニングまたはガイディッド(指導付き)ラーニングと呼んでいます。

段階的というのは、すでに学習した知識を使って次のことをより効率的に学ぶからです。それからガイド付きというのは、AIが課題解決に向けて学習するときに、あらゆる可能性を探索して、すでに人間が知っている知識や仮説を導き出すには膨大な時間がかかってしまうので、そこをAIによってあらためて探索する必要はありません。

進化の過程や社会の歴史的過程において、人類は多くのことをすでに知っています。だから、これを1からやりなおす必要はないのです。それを、効率よく人工知能に教え込むのがカリキュラムです。これをここ2年ほど作り上げてきました。

そこで、今はアーキテクチャーの部分にフォーカスしています。カリキュラムができたので解くべき問題が明確になり、GoodAIではそれを実現するためのアーキテクチャーに取り組んでいます。

そこで鍵となるのがグラジュアルラーニングです。つまり、すでに得た知識を利用して新しいことを学ぶ能力です。継続学習(Continuous Learning)、オンライン学習(Online Learning)など、アーキテクチャーではたくさんの要素が必要とされています。

これらを実現するには複数の方法があり、それをマイルストーンとして設定しています。ただ、その過程で行き止まりにぶつかったり、カバーしていない領域がないようにしたりしています。

例をあげて説明します。

例えば、画像認識の性能と上げていくという課題があったとします。そして、その延長で最後にたどり着くのが汎用人工知能だというロードマップを描いていたとしましょう。その途中で人間レベルの認識精度がでるというマイルストーンを達成したとしましょう。

しかし、そうだとしてもグラジュアルラーニングの問題は解けていません。それだけでは、自然言語処理の問題をどうやって解いたら良いのか、世界のモデルをどうやって獲得するのかもわからないでしょう。

そこで、このロードマップを描いた人は、どこまで画像認識の精度を上げていっても、カバーできていない領域があることに気がつくでしょう。そういう意味で、我々はカバーしていない領域がないようにしようとしています。

例えば、旅行にいくときは、前もってどこに行こうかと予定を立てますよね。何も予定を立てずにいっても、全然違う方向にいってしまって大事なことを見落としてしまうかもしれません。