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ホストの売掛金を踏み倒し、泥沼にハマった23歳女のやるせない事情
オンナの収支報告書【17】
鈴木 涼美 プロフィール
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彼の店に行くのが前ほど楽しくなくなっていた彼女は、つい他の有名店の初回に足を運び、そこでまたお気に入りのホストを見つけた。

彼もそれなりにキャリアの長いベテランホストで、以前入れ込んでいた代表のしつこい電話に代わりに出てくれたり、売り掛けの滞納はそれほど気にしないでいい、と行った入れ知恵をしてくれたりした。

新しいお気に入りと飲んでいる方が楽しくなり、その店でも20万円ほどの売り掛けを作ったが、その翌月にはなんとなく飽きてしまい、もともと指名していた代表ホストの店に戻ったり、友達が通っている店に枝客として行ったりしている間に、どこにどれだけマイナスがあるのかはわからなくなっていた。

「幹だった友達に、ここの店だけは漏らさないで払ってって言われて、それでも30万くらい使った後だったから、入金日前に担当の電話出ないで、友達からも鬼のように電話かかって来て、結局その後きまずくなった。

そこはでも、最低でも入れて欲しいって言われた20万は入れたんだと思う。●●くん(代表ホスト)のところも、時々5万とか持って行ってた」。

都合のいいことに歌舞伎町には200を超える同業種の店があり、別に3つの店で飲めなくなったところで、新規開拓はいくらでも可能だった。

それでも、借金まみれの状態が嫌になり、1週間ぶっ続けで仕事などしてみることもあるのだが、それなりにまとまったお金が入ると、それを過去の掃除に使うのはどうしてももったいない気分になってしまい、半分は返済にあてても残りの半分は新しく通い出した店などに使ったり、美容関係など全く別のことに使ったりしてしまった。

結局彼女は、ちょこちょこといろいろなところに借金を残したまま、仲の良かった友達とすら音信不通になり、約1年後に「ホスト全く興味なくなって、引きこもり」というメールを、友達のうち2人ほどに送った以外は何をしているのかよくわからない。

 

「見栄もあるけど、それより、楽しくなっちゃうとお金使っちゃうんだよね。使う、その瞬間はあとで返そうって一応思ってるんだよ。でも出勤できなかったり、稼げた頃には他に興味が行っちゃったり、それでマイナスが増えてく」

彼女をよく知る、同じくやや掛け漏れ癖のある女の子はそんなふうに彼女や自分の体質を解説していた。

お金があるといくらでも威張ることができるのが、夜商売の店の一つの醍醐味ではある。売り掛けシステムの存在によって、そのお金がたとえ架空のもの、つまり将来的には手に入るかもしれないが、とりあえず今は手元にないものであっても、前倒しで威張ったり楽しんだり酔いしれたりすることができるのである。

そして若さや女であることを換金することに抵抗や難しさを感じない女の子たちは、若さ溢れる自分の肉体をもって、その架空のお金を裏付けてしまう。

返すときまでにまた換金すればいい、という彼女たちの甘えは、実際に借金させる側の、足りなければ稼がせればいい、という論理と一致して、今日も歌舞伎町では架空のお金による架空の狂乱が幕を開ける。

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「十分満たされているのに、全然満たされていない」引き裂かれた欲望を抱え、「キラキラ」を探して生きる現代の女子たちを、鮮やかに描く。