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生命科学
やたらと戦争をしたがる人たちに教えてあげたい「ナマコ」の話
人間の対極にあるスゴさ

シリアや北朝鮮をはじめ、世界各地で一触即発の状況が続いている。なぜ人間はこうも戦争をしたがるのか。もっと賢い生き方を選べないものなのか。近著『ウニはすごい バッタもすごい』がベストセラーになっている東京工業大学の本川達雄名誉教授は、平和に暮らしたいならナマコの生き方に学ぶのが一番、と指摘する。

ナマコのスゴサは人間の対極にある

最近、『ウニはすごい バッタもすごい』という本を出しました。

生物はそれぞれ、スゴイんだ、生きていくためにこんなスゴイことをやっている。「われわれ脊椎動物だってスゴイんだぞ!」と、本の中で褒めちぎっています。

動物にはさまざまなものがいます。この本では、代表的な5つの仲間をとり上げました。それぞれが独自のやり方で繁栄しているものたちです。繁栄の原因はみな違い、それぞれがスゴイなあと褒めたのがこの本です。その中から、今回は「ナマコ」についてお話ししましょう。ナマコのスゴサは、われわれ人間のスゴサとは対極にあるスゴサだからです。

 

ナマコは棘皮(きょくひ)動物の仲間で、ウニやヒトデと同じグループに属しています。ナマコは他の棘皮動物同様、海にだけ住んでいます。沖縄なら波打ちぎわにナマコがごろごろ転がっています。寒い海にもいますし、深海の底にもたくさんいます。

ナマコは見るからに変な動物です。なにせ目がありません。江戸時代の俳人・炭太祇(たんたいぎ)も、

「そこここと見れど目のなき海鼠(なまこ)かな」

と詠んでいます。

ディズニーアニメや手塚漫画に出てくるキャラクターは、極端に目が大きくて、おでこが出ています。こう描くと可愛いんです。でも、ナマコには目がなく、じつは脳もないから、おでこもありません。これではまったく可愛くなく、そのうえあまり動かず、おもしろい仕草などしないので愛嬌もない。

ナマコは巨大イモムシ型ののっぺらぼーで、見るからにグロテスク。だからでしょう、夏目漱石の「吾輩は猫である」の中に、初めてナマコを食べた人はすごく勇気があった、と書いてあります。

目や脳、耳も鼻も舌もない

ナマコの体はないない尽くしです。目や脳だけでなく、耳も鼻も舌もありません。心臓や血管系もありません。筋肉はないわけではないのですが、ほんの少しです。

ナマコを輪切りにすると、ちょうどちくわのように見えます。ちくわの穴の中には水が詰まっており、そこに腸や生殖巣が浮いています。ちくわの身にあたる部分はすべて皮です。ナマコは体重の6割が皮。筋肉はたったの7%しかありません。われわれ人間とは大違いです。われわれは、体の半分近くが筋肉で、皮は1割強。ナマコはまさに皮ばかりで、筋肉のほとんどない動物なのです。だからあまり動かないのですね。

ところで、ナマコは何を食べているかご存知ですか。

砂です。もちろん砂粒は栄養になりませんが、砂のあいだに生物の遺骸のかけらや、卵などが混じっています。また、砂粒の表面はバクテリアの薄いフィルムで覆われています。ですから、砂をごそっとすくって食べれば、それなりの栄養が得られます。ナマコの口のまわりには、触手という細い手が生えており、これで砂をすくって口の中に押し込みます。もちろん、砂粒そのものが大部分を占めているのですから、まことに貧しい食事です。