Photo by iStock
ライフ
「プチ鬱」状態の僕を変えた一冊の本
そうか!実体験しないとダメなんだ…

プチ鬱→渡米→社長へ

子どもの頃は相撲やプロレス、ボクシングのテレビ中継に大興奮。高校では空手部に入部するなど、体を動かすのが好きな格闘技少年でした。

そんな僕の大学時代は'70年安保直前で学生運動が真っ盛り。周りの影響もあり、自然と読書量が増えました。そのとき、マルクス・レーニン主義に触れたんですが、今でいうプチ鬱の状態になったんです。というのも、考え方に共感はしても実践することができない。言行不一致、自分は偽物なのかと悩みました。

そんなときに読み、僕の生き方を一気に変えたのが、小田実さんによる外国旅行記『何でも見てやろう』です。「そうか!実体験しないとダメなんだ」と開眼。憧れていたアメリカに行くことを決意します。僕の場合は「見る」というより、「何でも試してやろう」でしたね。

今と違って情報が何もなく、片道切符の捨て身の渡米でした。利用できる留学制度もなく、とりあえず通っていた法政大学を休学。大学で入部していた空手同好会の先生を通じて、ハワイで空手のインストラクターをしようとしますが、上手くいかない。

その後、そのままロスに渡り、観光ビザを延長しながらイチゴ農園やハウスキーパー、皿洗い、庭師など、様々な仕事を経験しました。お金を稼ぎながら勉強し、短大を経てカリフォルニア州立大学ロングビーチ校3年生に編入しました。

 

生活が苦しく、勉強する時間がなかなかとれなかったので、思い切って生島ガーデニングカンパニーという会社を起業しました。その会社が成功し、余裕ができたことで、成績優秀で卒業することができたんです。

落ち着いて読書できるようにもなりました。この頃、読んで印象的だった本が当時アメリカでも人気だった吉川英治の『宮本武蔵』。孤独を貫きながら、自分の道を見つけていく武蔵と単身渡米した自分を重ね合わせたりしましたね。

目からうろこのお金の増やし方

帰国後、TBSに入社します。最終面接で「今後、日本の終身雇用制は崩壊し終身競争制になります。僕はいずれ独立します」と発言しました(笑)。その後、有言実行、平成元年にフリーになりました。

世界を旅するのが僕のライフワークなので、沢木耕太郎さんの『深夜特急』もハマりました。ただ迷いますが、僕が一番好きな沢木さんの作品は、『テロルの決算』なんです。右翼の少年、山口二矢による社会党委員長の浅沼稲次郎の暗殺事件を取材したノンフィクションですが、実はこの事件、いくつもの偶然の積み重ねで起きていることが、読むとわかります。そこがとても興味深い。

たとえば山口二矢は、購読していた読売新聞で、浅沼稲次郎が当日、日比谷公会堂で演説することを知ります。実はその情報は朝日や毎日には載ってなかった。もしとっている新聞が違ったら、事件は起きなかったかもしれない。人生に「if」はないけれど、僕ももし、アメリカに行かなかったら、TBSじゃなかったら、と考えてしまいます。

毎日が日曜日』も、その「if」が呼び起こされる小説。フリーになった時に読みましたが、もし仕事がなかったらそれこそ毎日が日曜日だし、あるいはフリーにならずに、サラリーマン生活を続けていたら退職後、主人公のように抜け殻になる可能性もある。幸福な人生とは何かと、深く考えさせられました。