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企業・経営
東芝が「紙クズ同然の決算書」を公表した本当の狙い
やっぱり「粉飾疑惑」は拭えない…

「上場維持が狙い」ではないハズ

監査法人のお墨付きがないまま、東芝は先週(4月11日)、会社の独断で2016年度第3四半期(4~12月累計)決算を公表した。

結果的に、異例の3度目の決算発表延期を回避したことから、メディアではこれ以上の決算発表の遅延が市場の混乱を招いて「上場廃止」処分を招くことを狙ったなどとする解説が目立った。

東芝の綱川智社長が記者会見で「上場維持に向けて最大限努力する」と述べて、そうした見方を半ば肯定したことを受けた報道だったのだろう。

しかし、本当に上場維持が東芝の狙いだったのだろうか。

というのは、会社法や金融商品取引法が定める外部監査人による会計監査で「適正」のお墨付きを得られなかった決算を発表したこと自体が、上場維持に不可欠な経営体制(内部統制)の再構築が未だにできていないことの証左として、上場廃止を現実の問題にしかねない側面を持つからだ。

実際には、上場維持以外に強い動機があったとみた方が自然だろう。筆者の目には、むしろ、東芝が一昨年に続き、再び粉飾決算疑惑が高まりかねない事態に直面しており、強引に幕引きを図ったように映る。

今週は、東芝があえて、紙クズ同然の決算書を公表したことの意味を考えてみよう

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「意見不表明」の意味

今、東芝問題で、筆者が最も注目しているのが、問題の決算発表の翌々日(4月13日)に、東芝が関東財務局長に提出した「四半期報告書」に盛り込まれた「独立監査人の四半期レビュー報告書」という文書だ。

会計監査人(監査法人)には医師や弁護士とよく似た守秘義務がある。このため、企業決算が公正で妥当な会計ルールに則って作成され、経営内容を正確に反映しているかを判定する立場にありながら、監査法人自身は監査の内容や下した判断について、マスメディアを含む一般に向けて説明することを禁じられている。

それゆえ、今回の東芝の第3四半期決算では、会社と監査法人の間に大きな見解の相違があったにもかかわらず、マスメディアは東芝の説明に依存して、その内容を報じた。つまり、裏付けのないまま、東芝寄りの報道が氾濫した可能性が否定できない。

そうした中で、唯一、外部から実情を伺う手掛かりになり得るのが、企業の有価証券報告書や四半期報告書の信頼性を保証する形で添付される、監査法人作成の「レビュー報告書」だ。今回もわずか3ページと情報量は決して多くないが、監査法人の本音が垣間見えることもあり得ると注目していた。

 

話を進める前におさらいすると、今回、東芝の決算を監査したPwCあらた監査法人は、監査意見として「意見不表明」という立場をとった。

「意見不表明」は、4ランクある監査意見のうち下から2番目で、上場企業決算に対する監査意見としては異例の低い評価である。

上場企業の決算では、4ランクのうち最上級の「無限定適正(意見)」が付くのが普通だ。よほどきわどい場合でも、「限定(条件)付き適正(意見)」でとどまり、「意見不表明」は極めて稀である。

このランクは、監査法人として適正な決算処理が行われたと保証できない、つまり粉飾決算があった可能性も否定できないという異常事態を示すランクだからだ。

最下級ランクの「不適正(意見)」は、監査法人も訴訟並みの立証をする必要が出て来るので、まず付くことはない。筆者が良く知る公認会計士たちは「あえて不適正を付けなくても、意見不表明で十分に事態の深刻さを表せて事足りる」と口を揃える。