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北朝鮮で緊張が高まると、なぜ「日本の円」が買われるのか?
「有事の円買い」国際政治と通貨の不思議

為替の予測はかくも難しいが…

ひと昔前は「有事のドル買い」がセオリーだったのに、最近の為替市場では、「有事の円買い」が常識になっているという。たしかにそうだ。東日本大震災の時には円高が進んだ。今回も朝鮮半島緊張が懸念されるなか、為替は円高になっている。

筆者は、為替について短期の見方を示すことはほとんどない。為替の短期的(概ね半年~1年以内)な動きを分析すれば、ほとんどランダムウォークになっている。つまり、その状態で為替の予測をすることは、サイコロの目をあてるのに等しい「神業」になる、ということだ。短期の予想することは無謀なので、筆者はやらないことにしている。

短期以外、つまり中長期では、実質金利差や貨幣量比率などを参考に、国際金融理論に基づき7割程度の予想ができる場合もあるので、必要な場合は中長期の予想だけ行うこととしている。ただし、この「有事の円買い」というのは、面白い話題なので、今回のコラムはこれに挑戦してみたい。

4月16日付けの日経新聞には「「有事の円買い」なぜ 背景に日本の弱さも」(http://www.nikkei.com/article/DGXMZO15276830T10C17A4000000/)という記事が掲載された。

その中で、これまでの世界的なショックが起こった時に円が買われたケースとして、①リーマン・ショックなどの世界的な金融危機(2008年9月)、②欧州債務危機(2010年)、③東日本大震災(2011年3月)、④英国民投票(2016年6月)で「EU離脱」が決まったとき、があげられている。

 

①と②の円高は、理論通りであり、簡単に説明できる。このとき各国とも金融緩和を猛烈に行ったのに、当時、白川方明総裁率いる日銀が無為無策であったため、円買いが進んだ。これは貨幣量比率で為替レートがだいたい決まるという、国際金融のマネタリーアプローチで説明できる。つまり、各国ともに貨幣量を増加させたのに、日本だけが増加させなかったので、円は各国通貨と比較して相対的に希少性が高まり、その結果円高になったわけだ。いうなれば、金融政策の失敗である。

本コラムでは、そのあたりも数量的に分析しており、例えば、2010年9月6日付け「菅・小沢代表選の政策論争で決定的に欠けている『金融政策』」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1135)などをご覧いただきたい。

③についても、伝統的な理論での説明が可能だ。東日本大震災のような国内危機が起こると、その後に大規模復興予算が組まれる。その結果、金融緩和をしなければ、国内金利高の連想になって、国内外の実質金利が日本のほうが高くなるので円高になりやすい。これは、いわゆる「マンデル・フレミング」効果であり、阪神淡路大震災の時にも確認されている。

多くのエコノミストが東日本大震災で円安を予想していたが、筆者は円高予想をしており、結果的にはその通りになった。ちなみに、2011年3月28日付け「財務省主導の復旧ではダメ!復興は新設する『東北州』に任せ、福島に国会と霞ヶ関を移転せよ」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2330)で円高を予想しており、そのために究極の金融緩和として、同年3月14日付けの記事「「震災増税」ではなく、「寄付金税額控除」、「復興国債の日銀直接引受」で本当の被災地復興支援を」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2254)では、日銀引き受けについても提案している。

④については、今回の朝鮮半島緊張と同種のモノと筆者は考えているので、その理由を以下に述べよう。

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