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「てるみくらぶ破たん」が示した"薄利多売ビジネス"の限界

感度の高い企業は既にシフトチェンジ

格安旅行会社「てるみくらぶ」破たんの余波が続いている。資金繰りに苦慮し、顧客からの入金を支払いに充てるという自転車操業状態になっていたことから、代金を振り込んだ顧客の数は最大で9万人にのぼる。

破たんから10日が経過した時点でも1000人以上が海外旅行中だったことを考えると、一連の騒動が収束するまでにはもう少し時間がかかるだろう。

破たんの直接的な原因が、杜撰な経営にあることは明らかだが、少し離れた場所から一連の出来事を眺めてみると、別の光景が見えてくる。

近年の日本経済は先進国の中では唯一、インフレとは無縁の国だったが、その常識が静かに覆されようとしている。

量の拡大に依存した薄利多売のビジネスモデルは日本企業の特徴でもあるが、日本人の購買力低下に伴って、このやり方が通用しなくなりつつあるのだ。てるみくらぶの破たんは、日本経済が大きく転換する予兆かもしれない。

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破たんした根源的な理由

「てるみくらぶ」は2017年3月27日、東京地方裁判所から破産手続きの開始の決定を受けた。記者会見に臨んだ同社の山田千賀子社長は、経営が悪化した理由として、広告費が増大したことや、航空機の座席確保が難しくなったことなどをあげた。

同社は2014年から赤字に転落していたにもかかわらず決算を粉飾していた可能性が指摘されており、もし事実ならこの点について弁解の余地はまったくない。ただ、経営悪化に関する山田社長の説明はおそらく本当だろう。

格安旅行会社は、航空機の余剰座席をまとめて仕入れ、ホテルと組み合わせた安価なパッケージ商品として利用者に販売するというビジネスモデルである。つまり航空機の座席やホテルの部屋を安く大量に仕入れることができなければ事業として成立しない。

 

日本にいるとあまり実感しないが、世界の航空輸送は驚異的な伸びを示している。過去20年の間に、北米の旅客数は約2倍に、欧州は約3倍に、アジアは約4倍に成長したのに対して、日本国内の旅客数はほぼ横ばいで推移している。

特に新興国の伸びが著しく、新興国需要に対応するため航空各社は超大型機から中小型機へと機材のシフトを進めてきた。きめ細かい運航ができる中小型機の普及によって座席の利用効率が上がって余剰座席が減少。

アジア地域の経済力拡大に伴い、来日観光客が急増したことで座席の確保がさらに難しくなった。これは格安旅行会社にとっては死活問題と言える。

苦境に追い打ちをかけたのが円安である。円安の進展によって海外ホテルの仕入れコストが急上昇し、利益率がさらに低下した。同社の主要顧客は低価格を強く望む層であり、仕入れコストの増加を価格に転嫁することができない。客数を確保しようと無理な広告宣伝を重ねたことで、さらに悪循環に陥ったことは想像に難くない。

日本も海外と同じように経済成長していれば、顧客の購買力も増え、コストを価格に転嫁することができたかもしれない。だが需要が伸びない中、仕入れコストばかりが上昇すれば、利益が減ってしまう。てるみくらぶが置かれた状況を整理するとこのようになる。