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野村證券×住友銀行 今だから話せるバブルの「武勇伝」と「教訓」

熱狂の中心にいた二人が本音対談
現代ビジネス編集部 プロフィール

どちらも質が落ちた

――「イトマン事件」「オリンパス事件」ともに、発生した背景にはバブルという時代がありました。あれから四半世紀が過ぎて、日本の社会はどう変わったのでしょうか。

國重 誤解を恐れずに言えば、事業の将来性などを見て、そこにおカネを貸していく以上、バブルというのは当然の現象なんです。担保なんてついでにあればいいよね、という感じで、まだ実態がないわけですから。

ところが、バブルが弾けた反動のせいで、今の銀行はとても臆病になってしまった。どんなに少額の融資の場合でも、必ず「担保はありますか」と聞くでしょう。これでは世の中にカネが出回らないし、景気も上向かない。

横尾 バブル後から現在まで「失われた20年」と言われますが、私は金融当局の責任も大きいと思う。

証券業界で言えば、不動産投資の相場がバブル崩壊で終わったなら、次の相場を作ればよかったんです。たとえば、「半導体相場」とか「IT相場」といった具合に、伸びる産業に資金が集まるような相場を作ればよかった。

ところが90年代に大蔵省は、証券マンが顧客に「推奨銘柄」を勧めることを禁じてしまった。証券マンがおすすめの銘柄を伝えないから顧客は株を買うことをためらい、株価は低迷した。そんな規制がなければ、今ごろ日経平均株価は5万円台まで上がっていたと思いますよ。

國重 今は、企業が「コンプライアンス」を気にしすぎているという側面もありますね。もちろん、バブル期のように何でも融資すればいいというわけじゃないけど、将来性のある企業に対しては、少しくらい担保が不足していても融資しようという気概をもった銀行マンが減った。

コンプライアンスが国を亡ぼすことにならなければいいのですが。

横尾 バブル後、証券マンの質も下がりましたね。顧客が何を求めているのかを理解できる人が少なくなった。全体的に能力が落ちているうえに、コンプライアンスでがんじがらめにされるから、新しい相場がなかなか生まれてこない。

――著書の発売後、おふたりにはどんな声が届いていますか。

國重 それがね、住友銀行時代の仲間をはじめ、誰も私に感想を言ってこないんですよ。おそらく読んだのでしょうが、「お前ばっかりカッコつけやがって」と思われているのかもしれない(笑)。毎年、銀行時代の先輩や同僚から年賀状が届くんですが、今年は1通も来なかったくらいです。

横尾 身近な人からは、「オリンパス事件の真相がわかった」と声をかけていただきました。あと本にも登場する方から、「これはリアルでいい」とメールをいただきました。

ただ、ネットの評判などを見ると、若い方からは手厳しいご意見も多いですね。「損をする株を売りつけるなんて信じられない」とか「証券マンは人間じゃない」とか(苦笑)。

國重 今の若い人の感覚から見れば、バブルの頃はめちゃくちゃに感じるかもしれません。でも、そういう時代が確かにあって、銀行マンも証券マンも自分の判断で融資したり、株を売ったりしていた。不謹慎かもしれませんが、面白い時代でした。

横尾 そうですね。先ほど國重さんがおっしゃったように、なんでもかんでも有担保主義になってしまって、日本経済に夢を語れなくなってしまった。これでは「失われた20年」どころか、30年、40年前の日本に戻ったのと同じです。

どの会社が10年後に伸びる、だからそこに投資しようというふうに切り替えないと。それこそがバブルの教訓だと思います。