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野村證券×住友銀行 今だから話せるバブルの「武勇伝」と「教訓」
熱狂の中心にいた二人が本音対談
現代ビジネス編集部 プロフィール

釈然としない気持ち

――札束が飛び交うバブルの渦中にあって、このままでいいのかという疑問を感じることはありましたか。

國重 正直言って、当時はそんなことは思わなかった。むしろ、まだ日本円が過小評価されていたから、これからどんどん円高になって、私たちの生活はずっと豊かになるだろうと楽観していました。

横尾 私は懐疑的でしたね。本来、株というのはその企業の将来性を見て買うもの。ところがあの頃は、企業が優良不動産を持っているというだけで株価が上がった。証券会社も企業の将来性を調べず、その会社が持っている不動産の価値が高ければ買おうとなってしまった。

國重 そこは銀行も同じですね。不動産に投資するという話があれば、その土地の価値をろくに調べず、いくらでも貸し込んだ。

横尾 日経平均株価が3万3000円くらいまで上がったとき、私はすでに第2事業法人部を離れていましたが、かつての同僚たちに「これはおかしい。もうすぐ暴落するかもしれないから、株は一度、全部売ったらどうか」と提案したことがあります。ただ、その後もしばらくは株価が上がり続けたため、私の提案は却下されてしまいました。

――その横尾さんの予感は現実となります。1989年末に日経平均株価は過去最高となる約3万8900円を記録するものの、90年代に入ってバブルは崩壊し、株価は暴落。そして同じころ、住友銀行や商社のイトマンを舞台とする「イトマン事件」が起こりました。

横尾 「イトマン事件」については私も以前から関心を持っていましたが、水面下で何が起こっていたのかは知りませんでした。今回、『住友銀行秘史』を読んでみて、國重さんが重大な役割を演じていたことがよくわかりましたよ。

國重 あの頃、住友銀行はイトマンに対しては何の調査もせず、言われるままに数百億円単位でどんどん貸し込んでいた。他行も「住友が貸すならウチも貸そう」と、何も考えずに融資していたんです。

そんな状況に疑問を持った私は、行内のさまざまなルートを辿って調べてみたところ、融資したカネがイトマン経由で闇社会に流れていたことがわかった。「何とかしないと住友がイトマンに食い尽くされてしまう」との危機感から、マスコミにリークしたり、監督官庁の大蔵省に告発文を送ったりしたんです。

横尾 あの事件には、住友銀行の「天皇」と呼ばれた磯田一郎会長やイトマンの河村良彦社長、さらに伊藤寿永光氏や許永中氏などのバブル紳士、多くの人物が登場しますね。

國重 本の中でも120人くらい登場しますからね。それだけ多くの人間が関わっていたこともあって、事件の全体像は見えにくかった。2005年には河村氏、伊藤氏、許氏の判決が確定しましたが、イトマンに融資したカネが最終的にどこに流れたのかは結局、解明できなかった。釈然としない気持ちは今も残っています。

 

「投資信託って何ですか」と刑事は聞いた

――一方の横尾さんは2011年に発覚したオリンパスの「巨額粉飾決算事件」に巻き込まれ1・2審では有罪判決を受けました。

國重 横尾さんの本の後半に事件の詳しい経緯が書いてありましたが、「イトマン事件」に比べれば登場人物はずっと少ないけれど、スキームがすごく複雑です。

横尾 ごく簡単にいえば、オリンパスが90年代以降、投資で発生した損失を隠していたというものです。オリンパスで財務部長、副社長、監査役などを歴任したある人物が、独断で資金運用を行ない、莫大な損失を出したために起こった。

スキームが複雑に見えるのは、一貫した損失処理の方針がなく、そこにオリンパスのカネを預かる海外の銀行の思惑も絡み、その都度、その都度、場当たり的に処理してきたからです。

私は野村證券時代、この人物に「無茶な運用はおやめなさい」とさんざん忠告していたのに、彼は聞き入れなかった。そればかりか、後になって粉飾の「指南役」は私だったなどと事実に反する証言をしたために、私も逮捕されてしまったんです。

國重 これだけ入り組んだスキームを、捜査当局は理解できているんですか。

横尾 わかっていないと思います。最初に任意の事情聴取をした刑事さんから言われたのは「投資信託って何か教えてください」ということでしたから。

國重 裁判官もわかってないんじゃないかな。殺人とか単純な詐欺事件と違って、こんな複雑な事件をいきなり理解しろといっても無理がありますから。

横尾 捜査当局が用意した「ストーリー」に沿って判決が下されたとしか思えません。私は2年10ヵ月勾留され、他にも同じ会社の仲間2人も同じくらい拘置所に入れられた。

拘置所の方が「特捜案件で3人一緒に捕まって、2年も3年も勾留されているのに、誰1人仲間を売らない。そんな事件はない。普通は何もしていなくても、自分が罪を逃れるために仲間を売る」と言っていました。

取り調べでは、2人とも「お前が横尾を売ったら、すぐに出してやる」と何回も言われたそうです。でも、あまりに捜査当局の作りあげたストーリーが荒唐無稽で……。

國重 仲間を売るにも、売れなかった?

横尾 そういうことです。ですから、我々はあくまで最高裁で無罪を勝ち取るつもりです。