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野村證券×住友銀行 今だから話せるバブルの「武勇伝」と「教訓」

熱狂の中心にいた二人が本音対談
現代ビジネス編集部 プロフィール

「2、3億円損しても大丈夫」という客がいた

國重 横尾さんの本を読んでいてすごいと思ったのは「俺がスッた3億が、君の肥やしになったならそれでいい」と言ってくれるお客さんがいたということ。このお客さんは株じゃなく、「横尾宣政」という人間を買ってくれたのでしょう。

横尾 私が若いころに心がけていたのは「2、3億円損しても大丈夫」というお客さんを見つけることでした。いくら信用してもらっても、億単位のおカネを出してくれるお客さんはそうはいませんからね。これはという人のところには、2年でも3年でも通い詰めて、株を買ってもらうんです。

國重 3年も通い詰めるのは、なかなかできることじゃありませんよ。横尾さんは「野村證券で一番、稼いだ男」と言われたそうですが、本を読むとそれも納得できます。

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横尾 國重さんも、支店長時代にずいぶん預金を増やしたそうですね。

國重 渋谷の支店長を引き継いだ時、預金残高は50億でしたが、10倍の500億まで増やしました。その際、部下に「今度の支店長は、いずれ頭取になる逸材です」とあちこちで触れ回るようにさせた。その後で営業に行くと、みんなどんどん預金してくれるんです。コイツと付き合っておいたら後で得するかもしれない、と思いますから。

ただ、その話が行内でも有名になっちゃって、全国の支店長がみんな同じようなことをやりはじめたので、当時の住友銀行には頭取候補が100人もいた(笑)。

横尾 支店長にはどのくらいのノルマが課せられるんですか。

國重 当初は、預金と貸金の合計で500億にしてくれと言われていました。でも私は、どうせなら預金だけで10倍にしようと、厳しい数字を自ら課したんです。

 

横尾 國重さんは、同期で一番、最初に取締役になられたそうですが、やはり出世する人は業績を上げるんですね。

國重 ところが、そうとも限らないんですよ。証券会社と違うのかもしれませんが、銀行は支店で業績を上げなくても出世する人がいるんです。「あいつは本部向きだから」という理由で、経験を積ませるために支店長になったという人もいる。要するに管理部門の人間ですね。こういう人は、さしたる業績を上げなくても出世する。

横尾 証券会社では考えられませんね。特に野村證券は「ノルマ証券」とか「ヘトヘト証券」などと呼ばれるように、ノルマ至上主義。業績を上げなければ絶対に出世できないし、ノルマを達成できない社員は辞めざるを得ないように仕向けられる。たとえば3か月ごとに転勤させて、全国を転々とさせるとか。

國重 それ、完全にいじめですよ。成績の良くない部下の扱いは銀行とは正反対ですね。銀行の場合は、あまりに辞める部下が多ければ「上司の管理に問題がある」とみなされます。上司の責任が問われる。

横尾 それは野村證券では聞いたことがないですね。使えない社員を置いておくほうが罪だ、という企業風土ですから。

100億単位のカネを簡単に貸していた

――おふたりの現役時代はバブル真っ盛り。取り扱うおカネの量も、今とはケタ違いだったんじゃないですか。

國重 先日、『住友銀行秘史』の元にもなっている25年前につけていたメモ帳を改めて眺めてみたんですが、当時は1件あたり500億とか600億円という融資がしょっちゅうありましたね。今の時代なら、5億円程度でも、貸すとなれば銀行はかなり慎重になるでしょうが、当時は100億単位のカネを簡単に貸していたんです。

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横尾 いちいち担保を取っていたんですか?

國重 取らないことも多かったです。企業に融資する場合は、プロジェクトの中身もろくに調べずに貸していました。私が役員になって支店長をしていた時代、ある会社に「裸」で4億ほど貸したことがあります。「裸」というのは無担保、無保証のことで、「何かあったら俺が責任を持つ」と言って貸した。ところがその会社は潰れてしまって、結局カネは返ってこなかった。

横尾 責任は取らされたのですか。

國重 副支店長以下、部下は減給とか戒告処分を受けました。ところが私には何の処分もなかったんです。なぜなのか人事部に聞いてみると、役員は処分しないんだ、と。「役員を処分すると、その人を役員に引き上げた経営会議のメンバーの能力が問われてしまうから」とのことでした。

横尾 億単位の焦げ付きを出してもお咎めなしですか。“カネ余り”の時代ならではの話ですね。私たちの業界だと、企業が信託銀行に資金を委託し、証券会社が売買を行う「特定金銭信託」――通称「特金」が、80年代後半の株価急騰で大流行しました。1984年3月末での残高が2兆5789億円だったのに対し、1989年9月末には46兆7737億円にまで膨れ上がった。

國重 5年ちょっとで20倍近く伸びたんですか。企業もカネが余っていたんですね。