医療・健康・食 ライフ 週刊現代

病気のほとんどは歩けば治る!? 日本人が知らない「健康の真実」

「歩けなくなる人」その兆候と対策
週刊現代 プロフィール

すり足で歩く人は危ない

「人間ドックなどでMRIを撮ると骨の様子や筋肉のつき方がよくわかります。骨粗鬆症は適切な投薬や運動で大きく改善できますから、自分の骨の状態を知っておくことは大切なことです。

また腰の周りに脂肪が多くついていて筋肉がしっかりしていない人は将来、椎間板に痛みが出て、歩けなくなってしまう可能性が高い。これは運動や食生活を見直すしかないでしょう」(周東氏)

普段から、すり足気味で歩く人も注意したほうがいい。足が上がりにくいのは筋肉が衰えている証左、すり足だとちょっとした段差でも転倒につながりやすい。都内の整形外科に勤務する看護師が語る。

「患者さんを見ていると、転んで骨折して歩けなくなりそうな人は一目でわかりますね。たとえば骨が弱い人は関節が変形していて、足がO脚になって、歩き方もギクシャクしている。また、筋力が弱くなっているため、背は前に曲がっているのに、重心はかかとにあるような人は転びやすいですね」

転倒を招きやすい病気にも要注意だ。大阪府富田林市で宮田医院を開業する宮田重樹氏が語る。

「たとえば関節症(とくに膝関節症)、視覚障害(白内障、糖尿病性網膜症)、前庭機能不全(めまい、ふらつき感)、自律神経障害(めまい、ふらつき)、頸髄症(ぎこちない歩き方、手足のしびれ)などです」

これらの病気がある人は、転倒の危険性が高いことを自覚しておいたほうがいい。

 

薬でふらついて骨折

だが本当に怖いのは、これといった持病もなく、自分は健常だと思っている人のケースだ。たとえば薬を飲むことで健康な人でも、めまいや立ちくらみが起こることがある。

「薬の副作用によって転倒発生率が上がる場合があります。

たとえば安定剤、睡眠剤、薬剤性パーキンソン症候群などの薬を服用している場合は、普段以上に転倒に気をつけなければなりません。特に最近問題になっているのが、睡眠剤です」(宮田氏)

高齢者には慢性的な睡眠不足に悩んでいて、睡眠剤を常用している人が多い。これまでよく処方されてきたのがベンゾジアゼピン系と呼ばれるタイプ(ハルシオン、レンドルミン、リスミーなど)の薬である。

前出の周東氏が語る。

「睡眠は健康のために必要不可欠ですので、睡眠薬の使用自体は否定できません。高齢者が質の良い睡眠を取れなくなると、翌日の活動量が落ちてしまい、また夜眠れないという悪循環に陥ってしまいます。

ただし、弱い薬を少なめに服用することをお勧めします。特にベンゾジアゼピン系の薬は頭がボーっとすることがあり、転倒する危険性が高まります。

最近ではオレキシン系という比較的安全性が高いとされる睡眠薬(ベルソムラなど)も出てきているのですが、ベンゾジアゼピン系の薬には常習性があるので、『この薬でないと眠れない』という患者さんも多いのが問題です。

この種の薬を飲んでいる人は、かかりつけ医と相談しながら他の薬に切り替えるか、量を次第に減らして断薬する努力をしたほうがいいでしょう」

転倒の危険性が高まるのは睡眠薬だけではない。多くの高齢者が飲んでいる降圧剤や糖尿病の薬も、体調などにより薬の効果が強く出過ぎると、過度の低血圧、低血糖になって、めまいやふらつきが出ることがある。

昨年、自宅で76歳の母が転倒したという女性が語る。

「あるとき、母が『最近お台所に立っているとフラフラするのよ』と言い出した。そうしたら、本当に洗い物をしながら、フラッと倒れ込んでしまいました。幸いなことに大事には至らなかったのですが、すぐにかかりつけ医のところへ連れて行きました。

そこでわかったのが、数日前から新しい種類の降圧剤を服用していたということ。健康診断の数値で少し血圧が高めに出ていたので、これまでより効き目の鋭い降圧剤に切り替えていたというのです。すぐに医者と相談して、元の薬に戻してもらい、ふらつきも収まりました」

高齢者になると肝臓の機能も衰えてくるので、先に飲んだ薬の成分が分解されないままに、次の薬を飲むことにもなりかねない。危険な転倒を防ぐためにも、薬の量や飲み方には十分注意を払う必要がある。

転倒して、骨折してしまうのは、当然骨が弱くなっていることも一因だ。前出の宮田氏が語る。

「骨粗鬆症は骨折し、寝たきりになるリスクが高まるという意味で危険な病気です。しかし、高血圧や糖尿病などの生活習慣病に比べて、骨粗鬆症の治療は軽んじられているように思います。

患者さんも脳卒中や糖尿病になるリスクは認識しているのですが、骨が弱くなり、骨折をくり返してしまうことの恐ろしさに気付いていない人が多い。

骨粗鬆症は薬を飲むことで骨折する確率が半分以下になるというデータもあります。特に骨が弱くなりやすい女性は、75歳を超えたらきちんと治療することを意識してほしい」