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現代新書

なぜカードは魔力を得たか? 人気占い師が明かす「タロットの秘密」

文化としての占いを考察

タロットから開いた世界

「鏡リュウジ」という奇妙なペンネームの人物をご存知だろうか。誰あろう、それは私自身である。そして、もしありがたいことに、あなたがこの「鏡リュウジ」という名前に見覚えがあるなら、かなりの確率で「鏡リュウジ=星占いの人」と思っておられるのではないだろうか。

正解である。16歳の頃から長年にわたってかれこれ30年以上女性誌を中心に星占いの連載を書かせてもらい、最近ではネット上で占星術に関する記事を提供することを日々の仕事とさせていただいているのだから。パーティなどでも、たまたま私のことをご存知の方がおられると、「えーー鏡さんですか、私結婚できるかしら。山羊座の生まれなんですけど」などと言われることが多い。

ただ、私は単に「星占い」だけを書いているわけではない。少し真面目なことをいえば大学院では宗教学を少しばかりかじったし、ユング心理学などにも手を出しており、その方面の翻訳などの仕事もかなりしている。自分でいうのもなんだがかなり手広く仕事をしてきたと思う。

そして、その出発点は実は占星術ではなく、タロットだったのだ。

 

1970年代後半、私はタロットに出会った。その神秘的な絵柄に惹きつけられ、不思議な世界に関心を持った。

澁澤龍彥や種村季弘といった幻想文学者の作品に惹きつけられたのもタロットからであったし、占星術にも西洋の秘教の世界にもルネサンス図像学にも、そして深層心理学にもタロット経由で足を踏み入れてゆくことになる。

たったひと組の、そしてお世辞にも芸術的とはいえない、素朴な占いカードがこのような広い世界への窓口となっているとは、当時10歳そこそこの私には知る由もなかった。ただ、はじめてタロットを手にした時のインパクトはいまでも忘れない。

「タロットは古代の英知を凝縮した密儀の道具であり、それはユダヤ教神秘主義や占星術への鍵でもあり、未来を予知し、ときに運命を変える魔力をもつ」

当時手にしたタロットの入門書にはそのようなことが書かれていた。子供だった私はその言葉を真に受けた。