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企業・経営

東芝が決算書の中で自ら明かした「経営破たんのリスク」

この一文を、見逃してはいけない

綱渡り、どころではない

東芝は4月11日、2017年3月期第3四半期(10~12月)決算を公表した。2度にわたって延期した最終期限だったが、決算書が正しい事を証明する監査法人から「適正意見」をもらえないまま、公表に踏み切った。上場企業としては極めて異例の事態。東芝株はすでに東京証券取引所から、「特設注意市場銘柄」と「監理銘柄」に指定されており、上場廃止になる危険性が高まっている。

四半期決算のレビューを行ったPwCあらた有限責任監査法人は、同日付で「結論の表明の基礎となる証拠を入手することができなかった」として、「結論の不表明」とする報告書を会社に提出した。監査意見の不表明は監査の教科書には出て来るものの、実際に東芝のような上場する大企業で出されるのはおそらく初めて。前代未聞の事態である。

PwCあらたは、「結論の不表明の根拠」として、米原子力子会社のウエスチングハウス(WH)が2015年12月に買収したCB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)に関連して発生した工事損失引当金6357億円について、「当該損失を認識すべき時期がいつであったかを判断するための調査」が含まれているとしている。

つまり、東芝は昨年12月末になって巨額の損失が発生することを明らかにしたが、実際にはもっと早く決算で処理すべきだったのではないか――という監査法人の疑問を東芝が晴らす証拠を提示できなかった、ということのようだ。

買収した後に東芝は、2016年3月期の第3四半期決算と、本決算、2017年3月期の第1四半期、第2四半期決算を行っている。ところが、そこでは巨額の損失の発生をまったく織り込んでいない。工事の損失は一気に生じたわけではないから、過去の決算で本来ならば引当金を計上しておくべきだったのではないか。そんな疑問が浮かぶ。実際に、損失発生を知っていたのに、引当金計上を先送りしていたとすれば、またしても粉飾決算を疑われても仕方がない、ということになる。

 

実は、今回公表された四半期決算には「継続企業の前提に関する注記」が付されているいる。「継続企業の前提」とは、ゴーイング・コンサーンとも呼ばれる重要な注記で、その企業の継続性に問題がある場合、に記載される。つまり、経営破たんのリスクについて株主に注意を喚起するための事項なのだ。

そこにはこう書かれている。

「借入金残高2835億円が財務制限条項に抵触しています。当該借入金については、当社は、借入先金融機関との間で2017年3月31日までの期限の利益喪失要求の一時的留保について合意を得ていましたが、2017年4月11日時点においては、借入先金融機関の請求があった場合に期限の利益を喪失する可能性があります。なお、当社が既述の借入金について期限の利益を喪失した場合、社債その他の借入金についても同様に期限の利益を喪失する可能性があります」

期限の利益とは、金融機関から3年とか5年という借入期限を決めて借りた借金でも、事前に約束した条件(財務制限条項)に抵触した場合は、その期限が無効になるというもの。つまり、借金をすぐに返済しなければならなくなる。しかも、2835億円の返済を求められた場合、社債や他の借金が次々と返済を求められる事態になるとしているのだ。

監査法人が出した「レビュー報告書」でもこの点が「強調事項」として重ねて記載、こう書かれている。

「会社には、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在しており、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる」

この記載を見ても分かるように、東芝の資金繰りは、もはや綱渡りの状態になっているようだ。同日公表したキャッシュフロー計算書には昨年12月末時点の「現金及び現金同等物」が8045億円と記載されている。借入金の返済余力も十分にあるように見えなくもない。

もっとも、これには昨年3月末に売却した東芝メディカルシステムズの株式売却収入6384億円が含まれている。つまり、東芝メディカルが売れなかったならば、1600億円しかキャッシュがなかったわけだ。売上高6兆円近くを誇った東芝からすれば、危機的な水準だ。

だからこそ、東芝は、この状況を乗り切るためには何としても半導体事業を売却して、キャッシュを手に入れなければならないわけだ。

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