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週刊現代

「男の冒険心」をくすぐる基本の10冊〜作家・柴田哲孝さんが推薦

遠くに行きたい衝動を読書でかなえる

冒険好きの昆虫好き

子どもの頃は父の部屋によく忍び込んではこっそり本を読んでいました。そんな僕に、父が買ってくれたのが少年少女文学全集。夢中になったのが今回1位に挙げた『シートン動物記』です。

中でも『狼王ロボ』は心躍る展開と、悲しいラストが印象に残っています。人間の仕掛ける罠を見破り、牧場を荒らしまわる狼王ロボ。が、ブランカという妻の雌狼が殺されると、ロボも捕らえられてしまう。ロボは人間が与える餌を拒み、やせ細っていくのですが、子供心にそれが崇高な行為に思えたのを覚えています。

動物を扱った作品もよく読んでいましたが虫も大好き。2位は『ファーブル昆虫記』。糞玉転がしの話は何度も何度も読みました。ファーブル先生が糞玉を割り、中に卵が入っているかを調べる場面があるんですが、僕も糞玉の実物が見たくて探しまわりましたね。

3位の『十五少年漂流記』はそのタイトルに惹かれ、中学1年の誕生日に買ってもらった。少年たちが乗った船が事故で漂流して無人島に漂着する話です。僕自身も小さい頃からよく「冒険」をしていて、当てもなく外をふらつき、迷子になって家に帰れないなんてことがよくありました。

この本は、そんな僕のどこか「遠くに行きたい」という衝動にピッタリ。冒険小説はその頃から好きで『ロビンソン・クルーソー』や『ガリバー旅行記』も読んでいました。

冒険熱が昂じ、24歳のときには貨物船に乗ってオーストラリアに行き、ジープで大陸横断。それが現地の新聞に載ったりもしました。その後、パリ・ダカールラリーにも出場して完走。モータージャーナリストとして記事を書くようになり、いまにつながっています。

「遠くに行きたい」という衝動が男の本能だとしたら、「大魚と力比べしたい」というのも男の本能だと思うんです。釣り好きは小さい頃に祖父に連れていってもらって以来で、パリ・ダカールラリーのときも必ず釣竿とリールを持参していました。スタートを待つ間ひとりで竿を垂れていると「何やってんだ!?」と人が群がってきました(笑)。

ヘミングウェイの『老人と海』は、一人小船に乗った老漁師と巨大なカジキマグロとの闘いを描いた物語。

4日間にわたる死闘の末、老人はカジキマグロに勝つのですが、帰途、船にくくりつけていた獲物が鮫の群れに襲われる。老人が港に帰り着くとマグロはもう骨だけ。だけど、ふだん老人のことを軽んじていた漁師たちが、骨の長さを測り、老人が巨大なカジキマグロと闘ったとわかると、称賛します。

老人のプライドの描写が絶妙で、ヘミングウェイのなかでも一番好きな作品です。

 

夢を与えてくれた開高健作品

オーパ!』は、ピラルクという世界最大の淡水魚を釣ろうとするノンフィクション。学生の頃、バイトでお金をためてハードカバー版を買った。僕は目標はあっても「夢」というのはない。そう言ってきたけど、あえて一つ夢をあげるならピラルクを釣ることでした。

開高さんが成し遂げられなかったことをやりたいと思い続けてきた。それで何度もブラジルに行き、ピラルクに挑戦して釣り上げるまでの経緯を『オーパ!の遺産』という本に書いた。

開高さんの作品では、ベトナム戦争の従軍体験を記した『輝ける闇』もそうですが、こういう作品を書ける作家になりたいと思いながら読みました。