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ビートたけしと緒形拳を巡る、奇妙な「因縁」

主演ドラマ『破獄』今夜放送!

吉村昭の名作を32年ぶりのテレビドラマ化

ビートたけしが、4月7日公開の『ゴースト・イン・ザ・シェル』で、ハリウッド映画に22年ぶり(1995年公開の『JM』以来ということになる)に出演したのに続き、きょう4月12日放送のテレビ東京開局記念日ドラマ『破獄』では主演を務め、ここのところ久々に役者づいている。

このうち『破獄』の脚本は池端俊策である。池端は、1983年の『昭和四十六年、大久保清の犯罪』以来、たびたびたけしの主演ドラマを手がけてきた。

先ごろ私が上梓した『ビートたけしと北野武』(講談社現代新書)でもとりあげているように、池端脚本・たけし主演のドラマは、この『大久保清の犯罪』をはじめ『イエスの方舟――イエスと呼ばれた男と19人の女たち』(1985年)、『あの戦争は何だったのか――日米開戦と東条英機』(2008年。以上各作品とも放送はTBS系)など、いずれも現実の事件や人物に取材した実録ドラマである。

9年ぶりに2人が組む今回の『破獄』もその例に漏れず、戦前から戦後にかけて脱獄を繰り返した実在の無期懲役囚をモデルとしている。

原作となる吉村昭の同名小説は、32年前にもNHKでドラマ化されている(1985年4月6日に総合テレビで放送)。NHK版『破獄』で主演を緒形拳を務めた。もっとも、主演といっても今回のたけしとは役が違う。緒形が脱獄囚を演じたのに対し、たけしは反対の立場である看守の役である。

おそらくもう30年、せめて25年早ければ、たけしが脱獄囚を演じたはずだ。しかし、さすがに70歳になったいまでは無理があるということだろう。

ちなみに緒形が『破獄』に主演したのは47歳のときだった(今回の『破獄』で脱獄囚を演じる山田孝之は33歳)。劇中で緒形は、刑務所の独房の高い天井まで、柱をつたって這いあがり、天窓を突き破って脱獄するなど、驚異的な身体能力を発揮した犯人に見事になりきっている。

 

ドラマと原作の相違点

ただ、主演の立場がまるで逆とはいえ、今回のテレビ東京版の『破獄』は、原作よりも、むしろNHK版のドラマに近いところがある。

たとえば、NHK版『破獄』では、脱獄囚・佐久間清太郎に対し、相手役として津川雅彦演じる鈴江圭三郎という看守が登場し、まるで宿命であるかのように、生涯を通して関係を続ける。なお、鈴江という人物は原作でも重要な役割を担うが、それは佐久間が戦後に収監された府中刑務所の所長としてで、登場はあくまで物語の後半にかぎられる。

ひるがえって、今回のテレビ東京版『破獄』では、公式サイトの登場人物紹介を見ても鈴江という人物は見当たらない。しかし、たけし演じる浦田進という看守が登場し、やはりことあるごとに佐久間と関係を持つ。

浦田は原作小説では、東京・小菅刑務所の戒護主任の看守長として出てくる。原作でも重要な役を担うとはいえ、登場はやはり物語の一部に限定される。これに対し、今回のドラマでは、浦田は小菅から網走刑務所へ看守長として転任し、佐久間と長きにわたり関係することになる。

原作では、佐久間が刑務所を移るたびに、相手となる看守ら刑務官も変わる。それをNHK版のドラマでは、佐久間の相手役として1人の看守を立て、時代を越えた1対1の対決として描いた。この構図は、今回のテレビ東京版の『破獄』でも踏襲されているというわけだ。

今回のドラマが、かつてのNHK版の構図を踏襲したのは、まず何より、そうしたほうが視聴者はドラマに感情移入しやすくなるからだろう。

それと同時に、脚本の池端俊策のNHK版『破獄』への思い入れがそうさせたのではないかという気もする。というのも、NHK版の脚本を手がけた山内久と、そして主演の緒形拳は、池端とはかなり近い関係にあったからだ。