今回のミサイル攻撃の意味とは何だろうか…〔PHOTO〕gettyimages
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米軍がシリアをミサイル攻撃した意味 〜中東混迷の転換点となるか
紛争7年目で初の軍事介入

ミサイル攻撃は転換点なのか

シリア北西部イドリブ県の反政府勢力の支配地域が空爆され、子供を含む80人以上が死亡し、数百人が負傷した事件(2017年4月4日)。

これを受けて、アメリカのトランプ政権は、シリア領内ヒムス市南東約40キロに位置する政府軍のシャイラート空軍基地に50発以上の巡航ミサイルによる攻撃を敢行した。

この攻撃は、今年1月に誕生したトランプ政権が初めて発動した軍事作戦であるだけでなく、シリア紛争が始まった2011年春以降で初めての米国による直接的な軍事介入となった。

米軍の戦艦よりシリアに向けて発射されたトマホーク〔PHOTO〕gettyimages

これまで米国は、反体制派を支援するために主に訓練や特殊任務を目的とした部隊をシリア領内に派遣するなど、間接的には紛争に関与してきた。

そのため、今回の巡航ミサイルによる攻撃に米国の対シリア政策の大きな転換の兆しととる向きもあるだろう。

トランプ大統領は、2013年8月にシリア国内で最初に化学兵器が使用された事件の際に軍事介入を見送ったオバマ前大統領の弱腰を批判していた(ただし、2013年の当時はシリアへの軍事介入に反対の立場を示していたが)。

それゆえに、トランプ大統領なりの「自分らしさ」を出すという意図もあるのかもしれない。

シリア紛争への限定的な影響

しかし、少なくとも短期的には、今回の事件を機に、事態が大きく変化し、シリア紛争が収束に向かっていくとは考えにくい。

なぜなら、こうした紛争収束のシナリオは、米国の対シリア政策の一大転換――大規模な直接的な軍事介入が行われること――が前提となるが、トランプ政権にその意志と能力の両方があるのかどうか、現段階では疑わしいからである。

 

巡航ミサイルによる攻撃が敢行された直後(日本時間午前11時から)の会見で、トランプ大統領は、アサド大統領を「シリアの独裁者」と呼び、攻撃の目的を「虐殺と流血を終わらせるため」と述べた。そのことからも、米国がついにシリアへの大規模軍事介入を決断したのではないか、といった見方もSNSなどで散見された。

だが、実際のところ、この文言にはトランプ政権の慎重な姿勢が見え隠れしている。「正義、平和と調和のためにアメリカは立ちあがる」といった力強いメッセージを発する一方で、「虐殺と流血」に責任を負っている主体を特定・明示はしてはいない。

つまり、軍事介入によるアサド政権それ自体の打倒については明言を避けた(今後のために含みを持たせておいた)ように受け取れるのである。

むろん、今回の攻撃が、次の化学兵器の使用やさらなる「虐殺と流血」を抑止する効果を持つのは確かである。

シリア紛争において実質的な航空戦力を持っているのは政府軍とそれを支援するロシア軍だけであり、また、使われた場所が反体制派の支配地域であったことから、化学兵器の使用主体は政府軍であったと見る向きが強い。少なくとも米国はそのように断定した。

使用主体については未だにはっきりとしないが(可能限り早急かつ客観的な調査が必要である)、トランプ大統領の発言は「化学兵器の使用に対して米国は沈黙しない」という重要なメッセージを含んでいる。