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学校・教育 野球 週刊現代

野球選手の人生は13歳で決まる(1)想像を絶する有力校の争奪戦

なぜ彼は大阪桐蔭に決めたのか

「ドラフトで人生が決まる」と言われたのは昔の話。いまの時代、才能のある野球選手の名は中学時代から全国に響きわたり、有力高校が争奪戦を繰り広げるのだ。このセンバツのスターもそうだった。

中3で最速146km

今年の第89回選抜高校野球、戦前の話題はプロも注目するスラッガー、早稲田実業の主砲・清宮幸太郎、その好敵手・履正社の安田尚憲だった。が、のちの世には「スーパー中学生」と呼ばれた少年が、鮮烈なデビューを飾った大会として語られるようになるだろう。

中学時代から投手と野手で類い希な才能を発揮して日本代表に選ばれ、初めての甲子園でも「二刀流」で縦横無尽の活躍を見せた大阪桐蔭の新2年生、16歳の根尾昂である。

1回戦から5番・ショートで登場すると、即座に甲子園初打席で初安打初打点をマークした。2回戦は八回からリリーフ投手として初めてのマウンドを踏み、2回を1安打無失点に抑える好投を見せる。さらに、準決勝ではヒットこそ打てなかったものの、再三に渡る巧守でチームのピンチをすくい、甲子園初出場で決勝戦へ進出している。

スタンドに詰めかけた観衆は、177cm、77kgの、華奢にも見えるしなやかな肉体が躍動する姿に魅せられた。その独自のプレースタイルの源にあるものは何かと報道陣に聞かれて、根尾は2歳から中学2年まで続けていたスキーを挙げる。

「スキーではとくに体幹と下半身を鍛えられたと思います。頭が落ちたりミスしたりすると、すぐ転倒してしまう。そこでしっかり体勢を保つことが、野球にも生きているのかな。

例えば、守備で体勢が悪い状態でゴロを捕りにいっても、しっかりと身体を立て直せる。そういうときでも身体がブレないのが、スキーでついた力だと思います」

俊敏で鮮やか、ときに華を感じさせるその動きの背景には、従来の野球選手とはまったく異なるバックボーンがあった。

内野、外野、投手で走攻守にわたる非凡なプレーを見せ、「好きなポジションは全部です。どこでもできるように準備してるし、どこでもやりたい」と言い切る。投打の二刀流、日本ハムの大谷翔平とはまた違う天才的オールラウンダーの出現だ。

内野手としての甲子園デビューは鮮烈だった。

一回裏、無死満塁。

4番の山本ダンテ武蔵が押し出し四球を選んで1点先制した直後、一気にたたみかけたい絶好のチャンスで最初の打順が回ってきた。試合前、心構えをこう語っている。

「回の先頭だったらチャンスをつくれるように、ランナーがいる場面だったら得点につながるようなバッティングをしたいです。相手投手はしっかりとコースを突いてくる印象があるので、ボール球に手を出さず、甘い球を見逃さないでたたく」

持ち味は何か、どんな姿を見せたいか、と聞かれると、こう強調した。

「全力プレーです。打ったらフルスイング、塁に出たら全力疾走。いつもバッティングは思い切りよく、塁に出たらひとつでも先を狙う。そうすれば相手のバッテリーに圧をかけられますから」

質問した記者の目を真っ直ぐ見て、ハキハキと快活に答える根尾の表情は、生来の聡明な性格を感じさせた。ちなみに、「生活の基本として挨拶だけはきちんとするようにしている」そうだ。

ただ、さすがに初打席の直前は、緊張感で少々硬くなっていたらしい。ベンチで監督の西谷浩一に「思い切り振れよ」とハッパをかけられた。

そして、1球もバットを振らずに3-2のフルカウントまで待った6球目。甘いカーブにタイミングを合わせ、鋭く金属バットを一閃させると、球足の速いゴロが一・二塁間を抜けてゆく。記念すべき初打席が2点タイムリーとなり、初安打、初打点が記録された。

「見ていこう、とは考えなかった。フォアボールを選ぶのは嫌ですから。ただ、もっと早く打っておけばいい球もあった。緊張もしていたし、自分のスイングはまだできてなかったと思います」

ヒットはこの1本だけで、結果は5打数1安打2打点。とりあえず、甲子園のデビュー戦としては合格点ではないか、と監督の西谷に尋ねると、彼は慎重にこう答えた。

「しかし、あの打席以外は4打席ともフライばかりでしたからね。これからアジャストしていかなければならない面もある」

ショートの守りでは、4度の機会で危なげなくゴロを処理し、八回からセンターに回っている。フライを追ってセカンドの坂之下晴人と接触しかけた寸前、ヒラリと体をかわす身軽さも見せた。

根尾自身が振り返る。

「あそこは内外野の声の連係をしっかりやらないといけない場面でした。甲子園はスタンドの声援で、お互いの声が聞こえにくいんですね。もっと声を出していかないと」

どの場面、どのプレーについて聞いても、具体的で明快な答えが返ってくる。これで根尾は持参したグラブ3つのうち、内野用と外野用の2つを使った。残る肝心の3つ目は投手用である。投手としての根尾は、中学3年で最高速度146km、高校1年で148kmを計測した速球派なのだ。

根尾は試合のない日も高校の練習場で定期的に投球練習を重ねており、甲子園での初登板に備えていた。根尾はいつマウンドに上がるのか、先発なのかリリーフなのか。

西谷はこう言っている。

「それは、両方ともあり得ます。彼を投げさせるチャンスがあればね」