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なぜ地方都市に「TSUTAYA図書館」が次々とつくられているのか?

人口減少と消費社会化のなかで…
貞包 英之 プロフィール

ショッピングモールと図書館

最後に、書籍という「商品」の購買にかぎらず、地方の消費環境の変化が、「滞在型」図書館の価値を高めている可能性である。人口減少のなかで書店のみならず、老舗の喫茶店や商店が潰れることで、しばしば地方都市の中心街では消費環境が貧弱化している。

だからこそ郊外のモールが人気を集める。一定の支出を我慢すれば、そこでは大都市でと同じようにチェーンのカフェやレストランで快適な時間を過ごせ、モードとしての新しい商品や情報に出会うことができる。

図書館も同じである。私たちに長い時間、無料で滞在できるだけではなく、本という形で大都市から送られるモードとしての情報にキャッチアップすることができる。

実際、私の住んでいた山形市周辺でも、宮城県多賀城市のTSUTAYA図書館に加え、米沢市の「ナセBA」や東根市の「まなびあテラス」など、快適な滞在環境を備えた複合施設としての図書館が近年オープンし、多様な本をディスプレイした、便利で快適な(しかし似通った)空間が実現されている。 

それを求めて、多くの人が集まるのだろう。勉強する学生や仕事をするサラリーマン、子どもを遊ばせる主婦や暇をつぶす老人。かつては街の中心部に集まっていた多くの人が、中心部が廃墟化しつつある今、図書館に続々と避難している。

実際、こうした利用者のニーズに応えるため、図書館は地方で急増している。1999年から2014年にかけて、図書館数は2592館から3313館へ700館以上増加し、その多くが地方に位置していた(図2参照)。

結果として地方で図書館はますます大切な場所になっている。

別の調査(「平成26年度 図書館利用者の情報行動の傾向及び図書館に関する意識調査」)では、博物館、美術館、史跡、体育館に行き、またスポーツイベント、コンサートや演劇を経験する割合は、政令指定都市や中核市など都市規模が小さくなるにつれて統計的に有意に少なくなるのに対し、図書館ではそうではなく、逆に(統計的には有意ではないが)街が小さくなる程、利用が多くなる傾向さえみられる。

人口減少と消費社会化に飲み込まれる地方で、図書館は本を借りることやさらに読むことさえ超え、快適に滞在するとともに、金を使わずにモードに触れ、現代社会の住人であることを確認させてくれる貴重なオアシスとして重宝されているのではないか。

つまり図書館はモードとしての情報を更新する「消費社会」からその地方が見捨てられていないことを示す証拠となっているのであり、そうして多くの人を集めることで、昨今ではまちづくりの目玉として政治家の政争の具にさえされているのである。