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国家・民族 週刊現代

佐藤優が教える、池田大作『人間革命』の読み方

なぜ、初版と二版で中身が違うのか

創価学会の精神の正史

池田大作氏(SGI[創価学会インタナショナル]会長、創価学会名誉会長)の名前を知っている人は多いが、その著作を読んだことのある人は、創価学会員以外ではあまりいないと思う。

創価学会を支持母体とする公明党は連立与党だ。現下の日本政治について知るためにも創価学会の内在的論理をおさえておくことが重要と思う。そのためには、〈創価学会の「精神の正史」である〉と位置づけられている『人間革命』を読むことが有益だ。

 

〈戦争ほど、残酷なものはない。戦争ほど、悲惨なものはない。だが、その戦争はまだ、つづいていた。

愚かな指導者たちに、ひきいられた国民もまた、まことにあわれである〉

この『人間革命』の書き出しに、創価学会の原理が端的に示されている。創価学会は本書の意味についてこう説明している。

〈「戦争ほど、残酷なものはない。戦争ほど、悲惨なものはない」―池田大作は、小説『人間革命』の冒頭に記しています。

執筆は、沖縄の地で始められました。1964年(昭和39年)のことです。日本で唯一の地上戦を経験した沖縄。戦争の悲惨さを、いやというほど味わった地から、平和と幸福の波を起こしていこうとの決意からでした。

この小説は、恩師・戸田城聖の生涯と、創価学会が一大民衆運動へと発展していくドラマをつづった全12巻の作品です。「一人の人間における偉大な人間革命は、やがて一国の宿命の転換をも成し遂げ、さらに全人類の宿命の転換をも可能にする」との主題で、宿命に泣いていた人々が、信仰を根本として蘇生していく姿が描かれています〉(創価学会公式サイトより)

実は『人間革命』には、初版と第二版がある。『人間革命』の第二版が必要になった理由は、聖教ワイド文庫版の序文でていねいに説明されている。

〈『人間革命』は、創価学会の精神の正史である。文庫版発刊に先立ち、『池田大作全集』への収録・発刊にあたって、全集刊行委員会から問題提起がなされた。

―それは、この二十年ほどの間で宗開両祖に違背し、腐敗・堕落してしまった宗門が、仏意仏勅の創価学会の崩壊を企て、仏法破壊の元凶と成り果てた今、『人間革命』を全集に収録する際にも、その点を考慮すべきではないか、ということであった。

そうした経緯から全集刊行委員会が名誉会長に宗門関係の記述について再考を願い出たところ、名誉会長は熟慮の末に、「皆の要請ならば」と、その意見を尊重し、推敲を承諾してくれた。

また、歴史の記述についても、原稿執筆後に新たな資料が発見、公開されていることなどから、再度、精察し、「五十年後の、若い読者が読んでもよくわかるように、表現や表記等も、一部改めたい」との意向であった。そして、それが、小説『人間革命』第二版として、『池田大作全集』(第144巻~第149巻)に収録、刊行の運びとなったのである〉

創価学会は、日蓮正宗の在家信徒集団として発足したが、現在は宗門と訣別して別の宗教団体となった。それならば、「精神の正史」の記述が改められるのも当然のなりゆきだ。

筆者はプロテスタントのキリスト教徒なので、キリスト教会の歴史に対するアプローチを熟知しているが、各教団は教会会史を時代状況に合わせて何度も書き換える。『人間革命』の記述が変更されるのは創価学会が生きている宗教であることの証左なのである。