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週刊現代
私たちが知らない「人間とは何か」〜固定概念が覆る革命的な人類史
絶対に読んでほしい3冊

同じ対象でも見える世界が違う

読書とは、あくまでも個人的な行為である。これを読みなさいと押し付けるべきものではないし、押し付けられても迷惑な話だ。

だが、これは絶対に読んでおいたほうがいいと、無理にでも人に薦めたくなる本に、まれにだが出会うこともある。それに該当する本が、これまでの私の読書歴の中で3冊だけあった。

コンラート・ローレンツの『ソロモンの指環』と、デズモンド・モリスの『裸のサル』、そして、リチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』である。この三冊に共通しているのは、その根底に「人間とは何なのか?」という問いかけがあることだ。

さて、そのように無理にでも薦めたくなる本がもう一冊、最近になって見つかった。それが『サピエンス全史』だ。

巷で話題になっている本なので、いまさらここで紹介する必要もないくらいなのだが、この本は読んで損がない、というより、今の時代、読んでおかないとまずいのではないかと思わせるほど、数々の知見に満ちている。

現生人類の発祥までさかのぼり、有史時代を経て現代、さらには未来までと、タイトル通り人類の歴史の全てを網羅している本書であるが、人類史に対する私たちの固定観念を揺さぶり、パラダイムシフトをもたらすほどの刺激に満ちている。

 

たとえば、言葉の獲得によって人類にもたらされたものは虚構の世界で、私たちは常に虚構の世界に生きている、という現実世界の捉え方や、農業革命や産業革命は大多数の人類に対してはむしろ不幸をもたらした、という認識などは、同じ対象を見ていても、視点を転換すれば全く違う景色が見えてくる好例だ。

人類を主人公に据えた壮大な冒険小説を読んでいるような錯覚すら覚える本書であるが、そこまで読者を惹きつける力を持っているのは、全編を通じて、人間にとって幸福とは何かという根本的な問いかけが、常に基調音となって響いているからに他ならない。

「殺人」という人間の本質

本書の最終章で著者は、私たちが真に直面している疑問は「私たちは何になりたいのか?」ではなく「私たちは何を望みたいのか?」かもしれない、と述べているのだが、あとがきでの「自分が何を望んでいるかもわからない、不満で無責任な神々ほど危険なものがあるだろうか?」という結びの言葉が耳から離れない。

ところで『サピエンス全史』で触れられている知見の多くは、進化生物学における最新の研究成果をベースにしていることが読んでいてよくわかる。そうした部分をより深く知るための好著が『第三のチンパンジー』である。

本書もまた、人類の発祥から現在、そして未来までを見据えた構成になっているのだが、タイトルからわかるように、遺伝子の98・4%が私たち人間と同じであることが判明しているチンパンジーとの対比からスタートして、人間を人間たらしめているものは何かという問いに答えようとしている。