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週刊現代
1円玉に描かれた「木」が実在しない植物って、ご存知でしたか?
日本のコイン「驚きのトリビア」

「1円」の木は実在しない植物

日本で一番安く、日常的に使われる貨幣、1円玉。近年では、インターネット決済や電子マネーの普及により頻繁に使う機会は少なくなったものの、やはり我々にとって身近な硬貨であることに変わりはない。

ところで、1円玉を見て、大きな「1」の数字が書いてある側と、木が描かれている側、どちらが表かご存知だろうか。

答えは、木が描かれている側が“表”である。同様に、5円玉は稲、10円玉は平等院鳳凰堂、50円玉は菊、100円玉は桜、そして500円玉は桐と、いずれも絵柄があるほうが表となっている。

しかし、「1円玉に描かれている絵は何の木?」と聞かれて即答できる人は少ないはずだ。それもそのはず、1円玉に描かれている木は、他の硬貨と違って、実は特定の植物のモデルが存在しないのである。

 

第二次世界大戦後の'54年、1円玉と50円玉のデザインが、硬貨としては初めて一般公募された。公募期間はわずか40日間であったが、それでも2581点の応募があったという。

そして選ばれたのが、当時京都府在住の一般人の中村雅美さんが作成した「若木」という題名の図案。選定した大蔵省によれば、「戦後復興期にある日本には、若々しく未来への希望を感じさせるものがふさわしい」という意図があったようである。

しかし当の中村さんは、この若木にはモデルとなる樹種は特になく、だからこそ却ってどの木にも通じる、と考えていたと語っている。つまり若木のイラストは漠然としたイメージで描かれたものなのだ。

ちなみに、1円玉の裏側の「1」のデザインは、また別の応募者によるもの。そのため、大蔵省は受賞者に対して賞金7万5000円を用意していたが、受賞した双方に半額の3万7500円を贈呈したそうだ。現在の貨幣価値に換算して約22万5000円。

何かと話題を呼んだ、2020年東京五輪のエンブレムのデザインに対して用意された賞金が100万円だったことと比較すると、意外にも少額だったことがわかる。(栗)

週刊現代』2017年4月15日号より