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防衛・安全保障 アメリカ 北朝鮮
トランプ政権が画策する対北朝鮮「静かな先制攻撃」の全容
「発射の残骸」計画をご存じか

トランプの自信の根拠

米中首脳会談を前に、北朝鮮がまた弾道ミサイルを発射した。

トランプ大統領は「中国の協力がなくても、米国が単独で北朝鮮に対処する」と表明している。いったい米国には、どんな選択肢があるのか。

今回の弾道ミサイルは当初、新型の中距離弾道ミサイル「北極星2型」とみられたが、そうではなく「スカッド改良型」という見方もある。いずれにせよ、ミサイルはいったん高く上昇した後、約60キロ離れた日本海に落下した。

この発射について、新しい技術を試した実験という見方がある一方、従来と比べるといかにも飛距離が短かったことなどから「失敗だった」という見方もある。菅義偉官房長官は「失敗の可能性もあるが、分析中」と慎重な姿勢だ。

失敗だったとすれば、何が原因だったのか。そこに触れる前に、トランプ大統領の発言をみておこう。

大統領は4月2日、フィナンシャル・タイムズ(FT)とのインタビューで「もしも中国が北朝鮮の問題を解決しようとしないなら、我々がやる。言いたいのは、それだけだ」「中国なしでも米国は北朝鮮に完全に対処できる」「『完全に』だ。それ以上は何も言わない」などと語った(https://www.ft.com/content/4d9f65d6-17bd-11e7-9c35-0dd2cb31823a)。

大統領と習近平主席は4月6、7の両日、フロリダ州にある大統領の別荘「マール・ア・ラゴ」で会談する。大統領の発言がFTで報じられたのは、会談直前のタイミングだ。初めに大きくドーンと出て相手をひるませるのは、大統領得意の交渉技でもある。

とはいえ、実際には「中国の協力なし米国単独でできる」ことには限りがある。FTをはじめ欧米各紙は秘密作戦(covert action)の可能性を報じてきた。これは少人数の特殊部隊による攻撃から、サイバー攻撃までさまざまなバリエーションがある。

 

たとえば、ニューヨーク・タイムズ(NY)は米国がオバマ政権時代から北朝鮮に対してサイバー攻撃をしかけてきたと報じた(https://www.nytimes.com/2017/03/04/world/asia/north-korea-missile-program-sabotage.html?rref=collection%2Fbyline%2Fdavid-e.-sanger&action=click&contentCollection=undefined®ion=stream&module=stream_unit&version=latest&contentPlacement=1&pgtype=collection)。

この作戦は「Left of launch」(発射の残骸)と呼ばれ、ミサイルの発射直前または直後に電子的手段でミサイル制御を不可能にしてしまうものだ。その名の通り、ミサイル自体を一瞬にして残骸に変えてしまう斬新な作戦である。

米国だけが秘密に開発してきたのかと言えば、そうではない。日本を含め27ヵ国が参加しているミサイル防御推進連合(MDAA)という団体は「発射の残骸」計画について、ネットで概念を公表している(http://missiledefenseadvocacy.org/alert/3132/)。

敵のミサイルを迎撃ミサイルなどで物理的に破壊してしまう手段を「kinetic(動的)」と呼ぶのに対して、電子的手段を使う発射の残骸作戦は「non kinetic(非動的)」と形容される。いわば静かに破壊するのだ。

北朝鮮は4月5日の発射に先立って、3月6日には4発同時発射という大胆な実験を成功させ、その後、同22日にも実験したが、そのときは発射直後に爆発炎上し失敗に終わった。この失敗の裏側には「米国によるサイバー攻撃があった」という見方も報じられている。今回の発射も失敗だったとすれば、同じ理由かもしれない。

NY紙はトランプ政権がオバマ政権から「発射の残骸」作戦の研究開発を引き継いでいる、と事前に報じていた(先のサイト参照)。

ネットを介して電子的に軍事施設を破壊する「non kinetic」作戦はもはや研究段階ではない。イランの核施設は2009年から10年にかけて、米国とイスラエルによって「スタックスネット」と呼ばれるマルウエア(機能を破壊するコンピュータのウイルスやコード)を使って破壊されたと報じられている。