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企業・経営
日本企業が海外企業を買収する前に克服しておくべきこと
M&Aは史上最高額を記録、でも…

外国企業を日本企業が「経営」できるか

「海外M&A最高11兆円 日本企業、昨年度 低金利で大型化」ーー。

4月3日付けの日本経済新聞は、M&A(合併・買収)助言のレコフの集計で、2016年度の日本企業によるM&Aが過去最高額になったと報じた。金額は10兆9127億円。ソフトバンクグループが買収した英半導体設計のアームス・ホールディングス(約3兆3000億円)が大きかった。

日本企業のM&Aはこの3年、過去最高を更新し続けている。一時に比べて円安になったものの、低金利と豊富な手元資金を背景に海外企業を積極的に買収している。国内の人口減少が鮮明になる中で、多くの企業が「グローバル化」を進める過程で海外企業を傘下に収める例が増えているわけだ。

問題は、買収した外国企業を日本企業が「経営」できるかどうか。株式を取得して傘下に収めることは資金さえあればできるが、「グローバル企業」として経営できるか、となるとハードルは高い。

現在、経営危機に直面している東芝が典型例だ。2006年に米原子力大手のウェスチングハウスを買収して傘下に収めたが、最後まで東芝はコントロールできていなかった、とみられる。

もちろん、東芝本体からWHの取締役会に幹部を送り込んでいたが、実質的な事業運営は現地人幹部が担っており、最後は正確な経営情報すら東芝の取締役会には報告されていなかった模様だ。

 

東芝の原子力部門の現場に聞くと、「ウェスチングハウスの社員と会うと、どっちが親会社なのか分からないような態度だった」という声が多い。ウェスチングハウスからすれば、確かに資本は出してもらったが、技術は自分たちの方が上だ、という自負があったのだろう。

だが、逆に言えば、「子会社」の社員をそこまで増長させたのは、東芝のウェスチングハウスに対する統率力が弱かったから。つまり、経営が「甘かった」からに他ならない。

ウェスチングハウスがそうだったかは別として、外資系企業の幹部だった日本人に聞くと、「欧米企業は間違いなく性悪説に立って経営している」と口をそろえる。トップが甘い管理をすれば、部下は好き勝手に動く。時には上司をだますような事も平気でやるようになる、というのだ。

外資系金融で日本法人のトップを務めた人物も、「温情をもって接すれば、いつかは上司の気持ちを分かってくれる、と当初は考えて、日本的な人事を行ったが、まったくダメだった」と振り返る。結局、結果責任を追及され、実力が常に試される環境が当たり前の欧米人幹部にとって、「緩い上司」はカモ以外の何物でもないというわけだ。

1980年代後半から90年代前半にかけて、日本の大手企業はこぞって海外の老舗企業をM&Aした。

少し背伸びをすれば、業界ナンバーワンの名門企業を手に入れられるとあって、鉄鋼業でも、非鉄金属でも電機でも、不動産でも、金融でも、大型買収が頻発した。もちろん円高とバブル景気による「浮かれた経営」だったのだが、当時は日本企業の国際化としてもてはやされた。

当時のM&Aも、株式の取得で傘下には収めたものの、経営の一体化は望むべくもなく、グローバルなグループ経営を行うわけでもなかった。アラブ産油国がオイルマネーで企業の株式を取得しても、一切、経営には口を出さなかったのと似ているが、当時の日本企業の場合、投資としても成果を上げることはできなかった。

多くの企業が、高値で株式や不動産を取得し、どん底で売り払う結果になった。

欧米企業の場合、「売り」に出るには相応の理由がある。株主がいる場合、公正価値よりも安い値段で売られるケースはまずない。プレミアムが上乗せされた金額でなければ株主は手放さない。

あるいは企業が一部の事業を売却する場合、その事業の収益性がピークアウトしているか、もはやその国では将来性がないと判断されているケースが多い。

つまり、「お買い得」な会社など、そうはないのだ。

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