不正・事件・犯罪
もし「共謀罪」が成立したら、私たちはどうなるか【全国民必読】
知らなかったと後悔する前に
高山 佳奈子 プロフィール

「無限定」という恐怖

これらの反対意見が問題視する点の1つは、適用対象に限定がないことである。

「組織的犯罪集団」には認定や指定が不要なのはもちろんのこと、過去に違法行為をなしたことや、過去に継続して存在していたことすらも必要ない。当然のことながら、それ以外の集団との線引きが事前になされているわけではなく、構成員の属性も限定されていない。

当初、与党議員らは、一般人は適用対象にならない旨を述べていたが、その後、法務大臣はこれを撤回する発言を行っている。事実、法案にはそのような限定は書かれていない上、組織的犯罪処罰法に関する最高裁判所の判例も、限定を否定している。

すなわち、組織的詐欺罪を適用した最高裁の2015年9月15日の決定によると、ある組織がもともとは詐欺罪を実行するための組織でなかったとしても、客観的に詐欺にあたる行為をすることを目的として成り立っている組織となれば同法に該当し、中に詐欺のことを知らないメンバーがいても関係ない。

一般の集団がある時点から組織的犯罪集団とみなされることになるのである。

また、犯罪を行う計画についての「合意」は、やはり法案上限定されていないため、従来の共犯処罰に関する最高裁判例に従って解釈されることになる。

すなわち、暗黙のもので足り、ツイッターやフェイスブックなどSNSを用いて順次成立する場合もある。犯罪が確実に実行されることの認識も必要ない。

さらに、「準備行為」は、法案では例が挙がっているものの、「その他」の文言があるため、同じく無限定である。

予備罪や抽象的危険犯の処罰に必要だとされる実質的な危険が要件となっていないことから、文言上、危険性のない日常的な行為がすべて含まれることになる。

 

警察の実績づくりのための処罰

なぜ、このように無用な処罰規定を広範に導入する法改正が急がれているのか。

「政府に批判的な勢力を弾圧するため」、「米国に情報を提供するため」という見方にも説得性があるが、筆者は特に、「犯罪のないところに犯罪を創り出し、取締権限を保持するため」という動機が1つの背景をなしていると見ている。

近年の犯罪統計によれば、犯罪認知件数は激減しており、戦後最低新記録を更新中である。暴力団関係者の数とそれによる犯罪も大きく落ち込んでいる。仕事のなくなった警察が摘発対象を求めているかのように見える。

筆者がそのように考えるのは単なる憶測によるものではない。近年、何の違法性も帯びていない行為の冤罪事件や、極めて軽微な違法行為を口実とした大幅な人権剥奪が現に起こっていることが根拠である。