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米中首脳会談、トランプが「ビッグ・ディール」をものにする!?
すべてはこの日のための布石だった…

「ディール外交」第1幕

紆余曲折を経て、ついに4月6日と7日、トランプ大統領のフロリダ州の別荘で、トランプ大統領と習近平主席との初の米中首脳会談が開かれる。安倍晋三首相に遅れること2ヵ月、習近平主席も、あの豪華絢爛な「マー・ア・ラゴ」を訪問することになったのだ。

今回の米中首脳会談のキーワードは、「ディール」(取引)だろう。世界の2大国が「ディール外交」を展開し、ビッグ・ディールを成立させる(もしくはディールが決裂する)第1幕になるというわけだ。

「ディール外交」とは、自国の国益と他国の国益とを取引する、まるでビジネスのような外交という意味だ。

「ディール外交」においては、安全保障問題と経済貿易問題といった、本来は異なる分野でも、一緒にテーブルの上に置かれて、「ディール」の対象となる可能性がある。ごく大雑把に言えば、「安全保障分野ではこちらが妥協するから、経済貿易問題ではこちらの主張を呑め」といったことだ。

ビジネス業界で半世紀近くを過ごしてきたトランプ大統領は、まさにそんな「ディール外交」を展開しようとしている。対する習近平主席も、独特の外交をする中国の代表だから、条件次第ではディールに乗ってくるだろう。

このトランプ流の「ディール外交」は、オバマ時代までのアメリカ外交とは、根本から異なるものだ。

第二次世界大戦後の伝統的なアメリカ外交は、「三元外交」で進めてきた。表の交渉は国務省が担当し、その裏でCIA(中央情報局)が諜報活動や工作活動を行ってサポートする。さらに国防総省が世界最強のアメリカ軍を駆使して睨みを利かせ、場合によっては威嚇や攻撃に出る。このように外交官・諜報員・軍人が三位一体となった外交によって、アメリカは第二次世界大戦後の世界の覇権を維持してきたのである。

「三元外交」では、自由・民主・人権といった建国以来の「アメリカの理念」を、錦の御旗として掲げてきた。そうした「人間の普遍的価値観」を前面に押し立てることによって、アメリカの国益を世界全体に拡大させた。

ところがトランプ大統領は、こうした「アメリカの理念」には、さほど価値を置いていない。

 

実は、アメリカの建国以来の伝統にはもう一つあって、それは「実利主義」である。特にヨーロッパからの移民が流れ着いたニューヨークには、マーチン・スコセッシ監督が映画『ギャング・オブ・ニューヨーク』で描いたような、己の腕力と才覚だけに頼って富を勝ち取る「実利主義」の精神が、脈々と根づいている。トランプ大統領はまさに、『ギャング・オブ・ニューヨーク』でレオナルド・デカプリオが演じたアムステルダムの末裔のような男と言えるだろう。

そのようなトランプ大統領にとって、「アメリカの理念」など、単なるきれいごとに過ぎない。同時に、アメリカが戦後70年にわたって推し進めてきた「アメリカの理念」を掲げる「三元外交」は、いまや無駄が多く、現在のアメリカ人の国益には直接結びつかないと考えている。

だからこそ、トランプ大統領は3月28日、オバマ大統領が進めてきた地球温暖化対策を目的とする規制を見直す大統領令に署名したのだ。これによって、2015年12月に採択された「パリ協定」は、大きく後退することになった。

そのような「実利主義」に徹したトランプ大統領の方が、ある意味、オバマ大統領までの戦後の歴代大統領たちよりも、「アメリカ人の原型」に近いと言えるかもしれない。未開の地で己の腕力と才覚だけに頼って貪欲に最大限の富を求めていく――こうした「アメリカ人の原型」こそが、トランプ大統領を誕生させた最大の要因だろう。

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