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企業・経営
東電、役員に「日立再建の立役者」川村隆氏登用で再興はありえるのか
原子力を東電から分離する?

彼は自己否定できるのか

東京電力ホールディングス(東電)は3月31日、新首脳人事を内定した。その顔触れで注目されるのが、取締役会長に招聘される日立製作所の川村隆名誉会長(77)だ。

川村氏はリーマンショックで経営危機に陥った日立製作所を再建した立役者として知られるだけに、パッチワークが繰り返されて、歯止めのない国民負担の拡大が懸念されている福島第一原子力発電所事故の後始末の見直しで、手腕を発揮することが期待されるのだ。

そこに立ちはだかるのは、杜撰さが露呈して国策批判が再燃することを恐れる経済産業省だ。同省は国営東電に川村氏を招いた当事者であり、原発事故処理と企業成長という相反する目標、つまり「二兎を追う」戦略を東電に強いている張本人でもある。

日立製作所の川村隆氏 Photo by GettyImages

一方、川村氏の日立再建の背景に、自社でのテレビ製造や中小型液晶パネル、ハードディスク駆動装置(HDD)といった不採算部門を切り離し、成長分野と見込まれた社会インフラ事業に経営資源を特化する過酷な「選択と集中」があったことは有名だ。

そこで改めて着目したいのが、政府の試算で21.5兆円、民間シンクタンクの試算で50兆~70兆円という巨額の事故処理費用が必要と見込まれており、大赤字の廃炉・原子力事業である。

川村氏も経産省の研究会メンバーの一人として、この「二兎を追う」戦略を承認した経緯があるが、この戦略の見直しをためらうようでは、東電再建も国民負担の増加防止も困難だろう。果たして、川村名誉会長は自己否定ができるのか。その動向が注目される。

 

事故処理21.5兆円をどう捻出するのか

東電は、電気事業法の改正によって電力の小売り自由化が始まるのを機に、首都圏(1都7県)および静岡県の一部を事業地域とする旧東京電力株式会社が持株会社化した会社だ。

旧東電時代に、福島第一原子力発電所事故の処理のために、政府が当時の原子力損害賠償支援機構(現原子力損害賠償・廃炉等支援機構、現賠・廃炉機構)を通じて国有化した。現在も政府が議決権のある株式の50.11%を保有しているほか、これと別に交付国債の貸与という形で約5兆円の資金融通を続けており、事実上の国営会社である。

その当面の経営方針は、昨年末、経済産業省の「東京電力改革・1F問題委員会」がまとめた提言や、現賠・廃炉機構と東電が策定した「新々総合特別事業計画」で規定されている。

それらによると、福島第1原発事故の廃炉や賠償など事故処理費用は総額で21.5兆円。東電は今後数10年にわたって年間5000億円前後の資金を捻出し続ける必要があり、事業全体の再編や今回のような経営陣の刷新を不可欠としていた。