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医療・健康・食 ライフ 週刊現代
「腎臓を揉むと健康になる」は本当なのか?
整体師が書いた20万部のベストセラー

20万部売れる健康本はそうそうないが、ベストセラーだからといって、その内容を鵜呑みにしていいとは限らない。新聞宣伝を見て気になっていたあなたのために、本誌がこの健康法を徹底検証する。

「沈黙の臓器」だからこそ

「腎臓は地味な臓器で、その働きについてよく知らない人も多いでしょう。しかし、人間の身体にとって心臓の次といってもいいくらい、大切な臓器です。

私たちがふだん腎臓を意識することはあまりありません。身体の奥まったところにあり、心臓や胃、肺などと比べてどこにあるのか実感しにくいですし、具合が悪くなっても、最初のうちはハッキリとした症状が表れにくいからです。

腎臓は肝臓や膵臓と並んで『沈黙の臓器』と呼ばれています。しかし、腎臓は非常に重要な役割を担っており、この臓器に問題があると身体全体の疲れにもつながるのです」

 

こう語るのは、『疲れをとりたきゃ腎臓をもみなさい』の監修者で、金町脳神経内科・耳鼻咽喉科院長の内野勝行氏である。同書の著者、寺林陽介氏はあんまマッサージ指圧師・鍼師・灸師で、東京・六本木で治療院を開業している。

「1日1分の自分でできる簡単なマッサージで腎臓を整え、弱った体を修復できる」ことを謳う同書は版を重ねており、現在発行部数が20万部を超えるベストセラーになっている。読者からは「全身のだるさ、腰痛が軽くなった」「悩んでいた体の疲れ、むくみがとれ、寝起きがスッキリ!」といった声が寄せられているそうだ。

「腎臓は老廃物が混じった血液を濾過する役割を果たしています。必要なものと不要なものを分け、身体にとって不要なものだけを尿にして排出するという機能です。

腎臓が疲れて機能しなくなってしまうと、身体にとって必要なものが外へ流れ出てしまったり、逆に不要な老廃物が排出されずに身体や血液の中にたまって血行が悪くなったりします。

血行が悪くなると身体が活動するのに必要な酸素や栄養が全身に行きわたらなくなる。また血がドロドロになると血管や心臓に負担がかかり心筋梗塞や脳梗塞などさまざまな病気にもかかりやすくなるのです」(前出の内野氏)

腎機能の衰えについて、筑波技術大学東西医学統合医療センターの平山暁医師が語る。

「西洋医学では腎臓の機能は、尿の濾過能力を示すeGFR(推算糸球体濾過量)の値で評価することが多い。正常値はだいたい100くらいです。

この値が20を切るとさまざまな症状が出てくるのですが、20以下というと機能が8割も低下しているということなので、かなり末期的状況にならないと気づけないということです」

日本の基準ではeGFRが60未満になると、慢性腎臓病とみなされ、成人人口の約18%がその範囲に含まれる。かなり数が多いが、症状を感じていない人がほとんどだ。

「『疲れやすい』とか、『だるい』とかいうだけでは腎機能が低下していると気づかない人が多いのが現実です。

また、疾患にもよりますが、腎機能に障害が出ると、むくみが出る場合もあります」(平山氏)

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西洋医学的には「眉唾」

では、このような腎臓のダメージに対して、「マッサージ」は本当に効果があるのか。そして、そもそも腎臓を揉みほぐすことは可能なのか?

腎臓移植の専門家で、大塚台クリニック院長の高橋公太氏が語る。

「『腎臓を揉みなさい』という腎臓内科医には、会ったことがありません。私自身も患者さんに腎臓を揉んだほうがよいということはアドバイスしません。

そもそも腎臓はお腹からも背中からも筋肉で守られています。ですから直接揉むことは難しいと思います。ツボを押すことで間接的に刺激を与えたとしても、それが本当に腎機能の回復に役立つのか、正直わかりません。腎臓マッサージをまったく否定するわけではありませんが、その効果についてはわからないのが現状です」