(C)三田紀房
エンタメ

日本は兵器開発の最前線にいなければダメ~戦争漫画家が語る国防論

“戦える”のに“戦わない”が理想だが…

『ドラゴン桜』『インベスターZ』などの著者で現在ヤングマガジンにて戦艦大和建造計画をテーマにした『アルキメデスの大戦』を連載中の三田紀房氏。この度『アルキメデスの大戦』第6巻発売のタイミングで特別対談が実現した。

お相手は『沈黙の艦隊』『ジパング』といった名作を生みだし、現在ビッグコミックで日中軍事衝突をテーマにした『空母いぶき』を連載中のかわぐちかいじ氏だ。

2人が思う日本と軍事の関わり方とは――。

本文・構成/後藤一信
写真/花房徹治

※『アルキメデスの大戦』の第1話 第2話はこちらからご覧いただけます。

戦争の描き方が変化している

三田紀房(以下/三田): かわぐち先生の最新作『空母いぶき』を拝読させて頂きました。

もう何もかもがリアルで、もし日中軍事衝突が発生するとしたら、日本政府関係者は、飛びついて読むんじゃないかと思いました。そして、私達は単行本片手に「あ、今、報道官が言った台詞、『空母いぶき』で読んだ!」って、なるんじゃないかと。

また、絵の説得力も圧巻です。私の中で凄く印象に残っているのは、作品内で日中軍事衝突が起こり、登場人物が慌てて生活必需品を買いにコンビニに行くと、商品棚は見事に空っぽで何にも残ってないという場面。たった1コマですが、東日本大震災で実際に見た光景で、あの時を思い出し背筋がゾっとしました。

かわぐちかいじ(以下/かわぐち): 私も三田さんの『アルキメデスの大戦』を読ませて頂きました。非常に面白かったです。あの時代を、「計算で描く」という誰も描かなかった切り口で描いた、全く新しい戦記マンガだと思います。

「数字は嘘を付かない」と言う台詞が今も印象に残っていますよ。さらに読み進める内に、戦艦から艦載機、次いで空母へと話が広がっていく、非常にスケールの大きな作品だなと感じました。色々な兵器が出てくる予感で、今後の展開が実に楽しみですね。

三田: かわぐち先生に、そう言っていただけると、ありがたい限りです。

かわぐち: 三田さんの作品もその1つですけど、戦争を客観的に見て描く事が出来る人たちが増えてきたと感じます。私の中では、戦争とヒューマニズム(人間性の尊重)は切っても切り離せない関係なので、作品はどうしてもウェットになっちゃうんですよ。戦勝国と敗戦国という意識が色濃かった時代を生きてきた影響もあるのかも。

三田紀房氏

三田: 世代で言えば私はかわぐち先生の一つ下の世代ですね。私は、どちらかと言えば数々の名作に勝つために、新しい切り口を探している側面もあるのかなと。私の好きな映画に『日本のいちばん長い日』があります。岡本喜八監督の傑作で昭和の名優勢揃いの大作ですが、そのリメイク版はご覧になりましたか?

かわぐち: 観ました、とても面白かったですね。確かにリメイク版の原田眞人監督は、鈴木貫太郎総理と阿南惟幾陸軍大臣の“友情”というウェットな新解釈を盛り込んでいて、旧作よりドラマ性が強かった。

世代というよりは、何事にも囚われない自由な発想が生まれやすく、また受け入れやすくなっているという事なのかな。

 

いま空母に焦点を当てる理由

三田: 発想と言えば、かわぐち先生は『沈黙の艦隊』で潜水艦を、『ジパング』でイージス艦を題材にし、今の『空母いぶき』では空母が取り上げられています。なぜ今、空母を描く事にしたのですか?

かわぐち: 「潜水艦、イージス艦ときたら空母でしょ」と編集に言われまして(笑)。でも実は私は、空母は後2、3年で時代遅れになるかもしれないとも思うんです。あんなに狙われやすい的はない。

かつて戦艦が通った道と同じで、技術革新によって主力兵器が入れ替わるのは世の常ですが、これからの主力は潜水艦とミサイルかもしれません。

三田: でも中国は今、大金を投じて空母を必死で造っていますよね。

かわぐち: そもそも、大陸国家に空母って必要ないはず。空母は、海洋国家だからこそ持たざるを得ない兵器なんですが、中国は無理に無理を重ねて海洋国家になろうとしている。背景には超大国への憧れがあるのかな。歴史上、空母機動部隊を持ち得た真の国は、英米日だけなのでそこに割って入ろうと。

三田: 中国が空母機動部隊を造りたいのには技術者の好奇心もあると思います。『アルキメデスの大戦』にも小石川っていう造船大尉が出てくるのですが、彼は戦艦オタクで、史上最大の戦艦建造に全精力を傾けている。建造後の事など考えていない。造りたいから造る。ただ、それだけ (笑)。

かわぐち: 日本人って物を造るのが大好きだよね。他の艦から改造されたものじゃない、最初から空母として建造されたのって、実は日本の「鳳翔」が世界初。

しかも、この「鳳翔」には全通飛行甲鈑、いわゆる地球ゴマを原理とする揺動軽減装置(ジャイロ・スタビライザー)や、起倒式煙突、着艦誘導灯、強力な対艦砲など、当時の新技術が盛り沢山(笑)。