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25年もの年月をへて、中島みゆき『糸』が「神曲」となったワケ
世代を超えて歌われる「奥深さ」

『中島みゆきのオールナイトニッポン』を聞いていない若者でも、カラオケで歌ってしんみりできるシンプルな名曲。だが、知れば知るほど奥深い曲なのだ。

『糸』/'92年10月7日に発表された通算20作目のオリジナルアルバム『EAST ASIA』に収録された楽曲。知人の結婚を祝って作られたと言われている。カラオケや音楽配信でロングヒット中

音痴でも歌える

先崎 昨年、世代を問わず、もっともカラオケで歌われた曲の一つが『糸』だそうですね。私はそのニュースを聞いて、ビックリしました。世の中に出てから四半世紀も経っているのに、どうしてそこまで歌われるようになったのか、不思議です。

小倉 一つには、明快なメロディはもちろん、曲そのものが持つ親しみやすさだと思いますね。

先崎 たしかに、この歌は本当に歌いやすい。私は音痴だからよくわかるんです(笑)。時代、世代を超えて愛される歌には、基本的には歌いやすいことがとても大事だと思います。

前田 ソフトでナチュラルな仕上げの曲だから、これだけ受け入れられたのでしょうね。

小倉 普遍性があって、言葉の力が強いことも重要です。『糸』の歌詞は若いカップル、恋人同士の出会いやこれからを歌っていて、説得力がある。とても温かみのある歌声で、ストレートに歌詞、メッセージを忠実に伝えようという意図がよく分かります。

前田 ただし、中島さんの歌詞は一筋縄ではいきません。この曲もそうですが、しばらく経って歌詞を見直したり、聴き直したりすると、全然違って聴こえたりします。

先崎 具体的にどう変わるのでしょうか?

 

前田 たとえば、「縦の糸はあなた 横の糸は私 織りなす布は いつか誰かを 暖めうるかもしれない」という歌詞は必ずしも必然ではなく、「かもしれない」という可能性を示しているだけ。そうなるためにはどうすればいいのかということを言外に問いかけられている。

また、ある程度年齢を重ねてくると、「あなたは、本当にそうなっているの?」と突きつけられるというような聴き方もできるんです。

小倉 中島みゆきの歌は暗いと思われている面もありますね。例えば『うらみ・ます』という歌の最後は「死ぬまで」という言葉で締めくくられている。これは死んだら、もうそこで終わりと解釈できるのに、永遠に恨み続ける歌だと思われている。

タイトルや曲調、耳に残るサビや話の展開だけを捉えて、膝を抱えてしんみりとなるような暗い歌ばかりだと思われがちですが、心を奮い立たせる歌もたくさんある。『糸』にも聞き逃しやすいナゾがあります。