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子どもに対してこれだけはやるな!カウンセラーが明かす逆算の育児法

【新連載】世代間連鎖を防ぐ子育て論
信田 さよ子 プロフィール

「家族の問題」から見えてきたもの

この連載は、長年カウンセラーとして、親子や夫婦の家族問題に取り組んできた私が初めて取り組む育児論です。

摂食障害、うつ病、子どものゲームネット依存、40歳近くになる息子の引きこもり、夫のDV、嫁から孫への虐待、夫のギャンブル依存症、娘のリストカット、息子の不登校、などなど、数え上げればきりがないほどさまざまな問題が家族には起きています。

日々のカウンセリングにおいて、こうした問題で苦しんでいるひとたち、母、父、妻、夫、娘、息子、祖母、祖父……それぞれの立場から、数えきれないほど多くの言葉を聞いてきました。

そして気づいたことがあります。そうか! 今家族で起きているこれらの問題は、いったいどのようにすれば防げたのか? 防ぐために必要なことは何だろう、そんな視点から育児について書いてみたらどうだろう、と。

「こうしたらいいですよ」ではなく、「○○を防ぐにはこうしたらどうでしょう」という方向性です。

交通事故が起きて初めて制限速度や交通法規の必要が見えてくるように、家族のさまざまな問題も、それに対処することではじめて必要なルールや予防のための方法が見えてくるのではないでしょうか。

 

「逆算」の育児論

現実からさかのぼって、それが起きないようにする。答えが出ているからこそ、別の解が生まれるようにする。それを私は予防というより、「逆算」の育児論と呼びたいと思います。

そこには2つの意味があります。

ひとつは世代間連鎖の防止です。

多くの親たちが、そのまた親たちから受けた育児態度やしつけ、もっと具体的に言うなら虐待に近い経験を、子どもに対して繰り返したくないと考えています。結婚はしたものの子どもを産むことにためらいを抱いている女性は、カウンセリングでは珍しくありません。

男性の中にも、自分の親子関係を振り返ると、とうてい親になる自信がない、夫婦2人の人生を選んだという人もいます。

子どもを持っている場合でも、自分の父親にアルコール問題があった男性は、子どもの目の前では決してアルコールを飲まないようにしたりします。自分の経験から逆算することで、つらかった経験を子どもに伝えないようにしている人たちが少なくないのです。

彼ら、彼女たちの子どもを持ちたいという願いや希望に添えるように、そして世代連鎖を防ぐのに役立つように、本書では具体的にいくつかの提案をするつもりです。

もうひとつは、広い意味での虐待防止です。

そもそも日本語の「虐待」という言葉は、英語のabuse(abnormal use)やmaltreatmentを語源としています。つまり子どもに対するよくない利用、よくない扱いのことを指しています。ところが「虐げる」という字が用いられているために、虐待というと、殴る蹴るといったとても残酷でひどい行為のことを指すと考えられがちです。

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しかし、近年では親のDVを見せること(目の前でお父さんがお母さんを怒鳴る、食器を割る、殴る、蹴るなど)も「面前DV」という心理的虐待とみなされるようになりました。

夫のDVがひどくて110番通報した場合、かけつけた警官は、その場に子どもがいれば、目の前のDVへの対処だけでなく、面前DVという心理的虐待が起きているとして児童相談所に通報しなければならないことになったのです。

また、母親が「あなたのために」と言いながら自分の思い通りに子どもの人生を決めていくことも、広い意味での虐待と考えてもいいでしょう。

幅広い年齢の人たちの語る生育歴、社会的に活躍しているにもかかわらず毎晩悪夢に悩まされている人たちの幼いころの記憶などを逆算していくと、「これだけは子どもに対してやってはいけない」行為が浮かび上がります。

そして親の立場からはわかりにくい、子どもは何が苦しいか、何がつらいかということがらが見えてきます。