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ディズニー映画から「王子さま」が消えた…変わりゆく女子の幸せ

「アナ雪」の本当のメッセージ

姿を消した王子さま

ディズニーの新作アニメ『モアナと伝説の海』は海のプリンセスの物語だ。

モトゥヌイ島の村長の娘モアナは、危難に陥った島を助けるため、一人きりで船を操り大洋を越え、半神半人マウイを探し、怪物テ・カァと対決する。

モアナは、人口数百人ほどの島の長の娘である。規模の小さい村ではあるが、いちおう、プリンセスである。モトゥヌイのプリンセス、モアナ。

ただ、ここにはロマンスがない。これっぱかしも恋愛要素が出てこない。完全なる冒険物語である。

ここまでロマンス要素のないプリンセス物語も珍しい。そもそも登場人物が少なく、王子さまはおろか、モアナの恋愛対象になる人物がまったく登場してこない。

王子さまはディズニー映画より姿を消しつつあるようだ。

*以下、アニメストーリーの詳細を示しています。特に『アナと雪の女王』のネタバレ注意。

王子さまでは幸せになれない?

かつて20世紀のディズニー・プリンセス物語は、最後は王子さまと一緒になって、幸せに暮らす、というのが基本だった。

結婚するまでは波乱に富んだ人生を送るも、結婚したあとは静かに落ち着いて暮らす、というパターンである。それが女の子にとって幸せな人生だと考えられていたのだろう。

ディズニー・プリンセスの物語は、女の子が幸せになるお話である。

最初、あまり幸せでない状態の主人公が、最後には幸せになる。この黄金パターンは守られている。白雪姫やシンデレラにとっては、幸せになるのは、王子さまと結婚することだった。

 

ただ、よく見ると、このころの王子さまには、あまり明確なキャラクターが与えられていない。だいたい一回会ったきり、少しお話をしただけで恋に落ち、次に会ったときは結婚している。いまから見ると、きちんと恋愛しているようには見えない。

ロマンチックではあるが、ラブストーリーではない。それが20世紀半ばのロマンスだったのだろう。

王子さまは、幸せの象徴みたいなものだ。キャラクターが感じられず、人間くささがなく、ひたすらやさしい存在で、つまりは「私を幸せにしてくれるふわふわしたもの」でしかなかった。ディズニー・プリンセス物語は、その始まりから王子さまに存在感がなかった。

その後、少し存在感のある王子が出てくる物語が作られたが(たとえば『アラジン』『美女と野獣』『塔の上のラプンツェル』)、そのあとには、王子の存在そのものが否定されていく。

『アナと雪の女王』がひとつの転機だとおもう。

この作品にはいちおう、王子は登場する。

プリンセス・アナと恋に落ち、結婚の約束をするハンス王子が出てくる。が、彼は途中で豹変し、アナもエルサも殺そうとする。かなりの極悪人である。

「王子さまとキスすれば幸せになる」というかつて信じられていた基本的な約束事を徹底的に破った男である。

これは翌年2014年の映画『マレフィセント』(かつてのアニメ「眠れる森の美女」の新解釈実写版)でも、王子さまにキスされたくらいで幸せにはなれない、という風景として描かれていた。

『アナと雪の女王』では、これまでのディズニー・アニメのように王子さまを登場させて、恋に落ち、プリンセスの危難には助けてくれそうに見せかけて、裏切らせた。プリンセスにとって「ふわふわした王子さま」ではもはや幸せになれないのだ、ということを激しく見せてくれた。