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米・ティラーソン国務長官の外交力は小学生レベルかもしれない

日韓中歴訪で露呈した信じ難い能力不足
近藤 大介 プロフィール

・今回のティラーソン国務長官の日本・韓国・中国歴訪は、トランプ大統領が唱える「アメリカ・ファースト」を、いかに外交政策に転換させていくかという旅だった。ティラーソン国務長官自身は、「アメリカ・ファースト」はアメリカの外交政策と矛盾しないと考えている。

・トランプ大統領はせっかちで衝動的、多弁だが、ティラーソン国務長官はゆったりしていて慎重派、寡黙だ。「まだ就任して6週間だから勉強中だ」と述べている。

・「トランプ予算」によって、国防総省は予算が10%増えるのに、国務省は28%も減らされる。この史上最悪の予算のため、ティラーソン国務長官は、トランプ大統領と国務省の摩擦の矢面に立つ。意気上がる国防総省と意気消沈する国務省は対照的だ。

・ティラーソン国務長官の初仕事は、マティス国防長官と組んでISISを打ち負かすことである。それは、軍によるISISの打倒、政権の移行、地域の安定化という3段階のプロセスを踏む。

・かつてブッシュJr.大統領は、クリントン大統領がオサマ・ビンラディンとアルカイダに甘かったから彼らが挑発的になったとして、イラク戦争に踏み切った。同様にトランプ政権は、オバマ政権がISISに甘かったから増殖したと見て、ISISを叩いて成功を収めようとしている。

・トランプ政権では、ティラーソン国務長官、マティス国防長官、ポンペオCIA長官、マクマスター安保担当大統領補佐官が積極的な関係を築いている。特にティラーソンとマティスの関係は、ジンとベルモットのようだ。

・ティラーソン国務長官は、トランプ大統領と毎日話をしていて、ホワイトハウスのトランプ大統領の執務室にアポなし訪問してよい許可を得ている。だが、まだ国務省改造計画について、トランプ大統領と詰めていない。

・ティラーソン国務長官は、かつてエクソンモービルで10万人の社員を7.5万人までリストラして、フォーチュン500強のトップ企業に導いた経験があり、国務省を効果的で効率的な組織に変えるよい機会だと思っている。ロス・ペロー、スティーブ・フォーブス、ミット・ロムニーなど、ビジネスマンが政府に貢献した例はある。

・トランプ政権は、NATO(北大西洋条約機構)の加盟国に、GDPの2%を国防予算にするよう要求した。アメリカは引き続き、NATOと共にある。

・ティラーソン国務長官は、イエメン問題にも多くの時間を割いている。20年以上も前、数年間イエメンに暮らしたことがあり、イエメン問題については明るいが、事は深刻だと考えている。

・核とミサイル開発に邁進する北朝鮮も大きな脅威だ。さらに韓国ではリベラルな文在寅が次期大統領になろうとしていて、中国政府は北朝鮮への関与政策を取っている。ティラーソン国務長官は、アメリカは20年の時間と13.5億ドルの予算を北朝鮮に空費したと考えている。

・今回のアジア歴訪では、メディアによるリスクを軽減するため、ティラーソン国務長官のスタッフは、私一人しか国務省専用機への同行取材を認めなかった。ティラーソン国務長官はそもそも目立つことが嫌いで、外交とは、アップル社がiPhoneの新商品の中身や発売日を教えないようなものだと思っている。

・ティラーソン国務長官は3月15日の夜、東京に降り立った時、大勢のマスコミが待ち構えて出迎えたことに、不愉快になった。その後、3ヵ国で何度もアジアの要人たちとカメラの放列の前で握手することにも、戸惑いを覚えた。

 

・3月23日木曜日に65歳になるティラーソン国務長官は、私にこう言った。

「3月にはエクソンモービルを引退して、孫たちと過ごすつもりだった。私はこの仕事を望んでいなかった。また求めてもいなかった。妻が『あなたならできるんじゃないの』と言うから承諾したのだ。

私はトランプ候補が大統領選に勝利するまで、面識もなかった。トランプ氏から『世界について語り合いたい』と申し出があり、会いに行って話をしたら、最後に『国務長官を引き受けてくれないか』と言われたのだ。そこで帰宅して、妻のレンダ・セント・クレアに話したら、『神はあなたのそばを通り過ぎたりしないわ』と言われた」

〔PHOTO〕gettyimages

韓国でもやらかした…

3月16日、岸田文雄外相とティラーソン国務長官の日米外相会談が1時間20分にわたって開かれたが、8年前のクリントン国務長官の訪日時に較べれば、何ともお寒い内容だった。

「2+2を早期に開催する」「辺野古移転が普天間飛行場移転の唯一の解決策である」「北朝鮮の核とミサイル開発は容認できない」「東シナ海の平和と安定のために協力する」……。どれも以前から決まっていることで、トランプ政権は「オバマ政権との違い」をアピールしているというのに、何一つ真新しい内容はなかった。

応対にあたったある日本政府の関係者は、こんな感想を述べた。

「ティラーソンという男は、何を考えているのかサッパリ分からなかった。日本側が北朝鮮の拉致問題について説明した時には、『何だそれは?』という顔をして聞いていた。もしかしたら、日本では中国の悪口を言って、中国では日本の悪口を言うような男なのではないか。

総じて、トランプ新政権がアジアで一体どんな外交を展開していこうとしているのかが、見えてこなかった。ティラーソン国務長官が日本に残したのは、不安と不満だった」

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