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ロンドンテロ事件が盛り上がらなかった「納得の理由」

ISは弱体化しているのかもしれない

グリニッジ標準時、午後2時40分ごろ。

その男の運転する黒のヒュンダイ車は、ウェストミンスター橋を猛スピードで通行人を次々にはねながら走り抜けた後、国会議事堂のフェンスに激突・停止した。車から降りてきた男は、用意したナイフで警察官を刺した果てに、他の警察官によって射殺された。

この間、わずか1分22秒だった。

2017年3月22日に起きたこの事件は、死者5名(うち容疑者1名)、負傷者50名以上の惨事となり、2005年7月7日の同時爆破テロ事件以来、英国における最悪のテロ事件となった。

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テロに「慣れ」てきた世界

ロンドナーたちが受けた衝撃の大きさは計り知れない。しかし、それでもなお、2015年から頻発してきたフランス、ベルギー、ドイツでのテロ事件の際の各国での反応に比べると、英国人たちの反応は冷静であったように思う。

「明日の朝、議会はいつも通り開く。私たちはいつも通り集う。ロンドナーたちも、世界中からこの偉大な都市を訪れる他の人びとも、明日が来たら起き上がり、いつも通りに日々を過ごす。」

テリーザ・メイ首相は、事件同日に発表した声明で、テロに対する不屈の意志を表明する一方で、憎しみや復讐心を煽るような表現は用いず、また、事件の背景についての予断を口にすることもなかった。

こうした冷静さは、日本でも見られた。報道各社による事件の扱いもSNSの書き込みも、過去の欧州でのテロ事件の際と比べると、落ち着いたものであった。

その背景には、事件翌日の23日、日本では学校法人森友学園の籠池泰典理事長に対する衆参両院予算委員間での証人喚問に注目が集まり、テレビや新聞でトップニュースとして扱われたことがあった。加えて、欧州から伝えられるテロのニュースがもはや珍しくなくなってきたこともあるだろう。

この2年ほどの間に、世界は頻発するテロに「慣れ」てしまったのかもしれない。

テロの悲劇に対する冷め過ぎた見方は、言うまでもなく、犠牲者や被害者、その友人や家族などの悲しみや苦しみを過小評価してしまう問題がある。そして、それは、彼ら彼女らにいっそうの悲しみと苦しみを強いることにつながる。

しかし、だからといって、テロリストに対する憎しみや復讐心を煽ることは、世界を敵と味方、非ムスリムとムスリムに分断し、混乱に陥れようとする企てに荷担してしまう。

それゆえに、筆者はこれまでも冷静さ、ないしは「慎重さ」がテロ対策の重要な要素であると論じてきた。今回のロンドンの事件には、それが多分に見られたように思う。