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「原子心母」に「黄色潜水艇音頭」!? 戦後日本の"迷訳"を旅する

そして片仮名語が日本語を壊す…
ビートルズの無茶苦茶な邦題の歴史を取り上げた前編(gendai.ismedia.jp/articles/-/51301)に続き、後編では戦後日本が海外から映画や音楽を取り入れる際に、どのような邦題を付けてきたのか考察します。
 

老いも若きも「バッテンボー」と歌った

「センチメンタル・ジャーニー」「ウスクダラ」「テネシー・ワルツ」などの片仮名書きの伝統の上にめでたくかぶさったのが、「ハートブレイク・ホテル」だった。「悲恋の宿」にはならなくて良かった。

戦後すぐに公開された西部劇コメディに「腰抜け二挺拳銃」というのがあり、原題はThe Palefaceだ。先住民たちから見た白人は色が白いからこう言われた、という意味の言葉だ。そしてその言葉を作ったのは、白人たちだった。

主題歌のButtons And Bowsは日本語に訳されて「ボタンとリボン」になった。

このButtons And Bowsという言葉が、ダイナ・ショアの歌唱でも、日本語歌詞によるカヴァーを歌った池真理子の歌唱でも、メロディに乗るとバッテンボーと聞こえたようで、日本じゅういたるところで、老いも若きも、バッテンボーだった。日常のルーティーンにやや気合を入れたいときの合言葉のように機能した。

戦後と言えば2016年で戦後は70年となった。しかしJingle Bellsという歌は、いまだに「ジングルベル」ではないか。一頭の馬が引く橇にはベルがいくつかつけてあるからこそ、Jingle Bellsなのに。

「ジングルベル」も片仮名書きの歴史の一部分だとすると、その片仮名は、自分たちにとって都合のいいように自由に改変されるのが常である、という種類の片仮名だ。