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ビートルズの歌の無茶苦茶な「邦題」に見る、この国の翻訳の歴史

今振り返ると面白すぎる!?

「抱きしめたい」にはならない

イタリー料理の店での夕食の席で、友人がいきなり語り始めた。

「日本の英語教育では、Likeという英単語は、好きである、という意味です。I like an apple.ですよ。それをそのまま、おなじ英語教育における命令形へと応用して、Like a rolling stone.は、転石を好きになれ、と僕は理解したのです。ほんとの話ですよ。そんな時期がありました。

 

ことほどさように、僕は日本の英語教育を受けた人です。その人をもってしても、I Want To Hold Your Handが『抱きしめたい』にはならないんです。

日本語題名をつけて、日本国内盤としての7インチを発売した当事者たちの、こんなもんでいいだろう、という態度ないしはとらえかたが、この邦題の向こうにすけて見えます」

「抱きしめたいのは、もうひとつあるよな」

と僕は言った。

「なぜそんなことを知ってるんですか」

「なにを抱きしめたいのだっけ」

「恋ですよ。これも、ふざけてます。We Can Work It Outが、『恋を抱きしめよう』なのです」

「『悲しみはぶっとばせ』というのだってあることだし」

と言った僕をたしなめつつ叱りもするような口調と表情で、友人は次のように言った。

「You’ve Got To Hide Your Love Awayが、それです。これも、ふざけてます」

「原題とずいぶん違うね。恋はいくつかあるよ」

という僕の言葉に、友人は即座に言った。

「国内盤の7インチでは、『恋を抱きしめよう』の他に、3枚あります。I Should Have Known Betterが『恋する二人』となってます。そして、You’re Going To Lose That Girlが『恋のアドバイス』でした。If I Fellが『恋におちたら』です」