女子中学生もターゲットに。被害者の裾野は確実に広がっている。©Kikuo Kakigi
不正・事件・犯罪 格差・貧困
SNSによって売春の闇へと堕とされた、途上国の少女たち
悲劇は一通のメールから始まった

彼氏に売り飛ばされた

「彼に、インドへ遊びに行こうと誘われました。反対されると思ったので、家族には黙って家を出ました。バスで国境まで行き、2晩列車に乗った後、またバスに乗り換えて、3階建ての家に着きました。

そこで3人の男にレイプされ、明日から客を取るようにいわれました。嫌だというとひどく叩かれ、“お前を連れてきた男に大金を払った。お前の借金だから全額返すまで働いてもらう”といわれました。それから毎日10人以上の客の相手をさせられました」

ネパールの首都カトマンズ。空港近くの住宅街に『マイティ・ネパール』というNGOがある。インドの私娼窟に売られ、売春を強要されていた被害者を保護する施設だ。

その一室で、カルパナ(17歳)が、自分の身に起こった悲劇を打ち明けてくれた。現地NGOと警察によってインド・プネーの売春宿から救出され、ネパールに帰還して2週間目のことだ。

カルパナの家はカトマンズ近郊の下町。家族は、雑貨店を営む両親と兄ひとり弟ひとり。映画とおしゃれが好きな普通の女子高生だった。

 

そんな彼女の日常を大きく変えたのは一昨年。SLC(高校卒業試験)を終え、春休みに入って間もなくのことだ。きっかけは、Facebookに寄せられた1通のメッセージだった。

「私の写真を見た彼が、かわいいねってメッセージをくれたんです。それでやりとりするようになって、電話でも話すようになりました」

カルパナの6歳上の兄は、Facebookを通じて知り合った相手と結婚したばかりだった。学校の友だちも、Facebook上で出会ったボーイフレンドの存在を自慢していた。だから、知らない男性からのアプローチにも疑いを抱かなかった。SNSから始まる恋は、あたりまえにあると思っていた。

しかし、彼女を待ち受けていたのは、信じた男に売り飛ばされるという現実だった。

少女の値段は約数万円〜数十万円

ネパールとインド間の国境を越えて、年間7000人ものネパールの少女が人身売買されている。少女の値段は、わずか数万~数十万ルピー(約数万円〜数十万円)。売られる先は、デリーやムンバイ、コルカタ、プネーなど、大都市の一角に巣食う私娼窟だ。

ムンバイにある最低最悪の売春宿。汗とアルコールとタバコの臭いが入り混じり、息苦しさを覚える空間で、少女たちの心と身体が深く傷つけられている。gi

売春宿での生活は過酷だ。狭い部屋に閉じ込められ、昼夜を問わず客の相手をさせられる。

しかし、何人客をとっても自分の手には1ルピー(約1円)も入らない。与えられるのは粗末な食事と数枚の衣類、そして安物のメイク道具のみ。HIV/AIDSなどの重い病気に罹かるか、客がつかない歳になるまで、性奴隷として酷使され続けることになる。

私がこの問題を知ったのは1994年のことだ。以来、本業のかたわら、『ラリグラス・ジャパン』というボランティア団体を立ちあげ、人身売買根絶を目標に被害者支援を続けている。活動は今年で20年目を迎えるが、未だ解決の糸口はつかめていない。

決して、無策だったわけではない。活動パートナーである『マイティ・ネパール』は、農村部を中心に啓発活動を行い、インドとの国境の要所に独自の監視所を設けるなどして犯罪抑止に努めてきた。それでも少女たちを守りきれないのが実情だ。むしろここ数年、犯罪の手口の複雑化により、さらなる困難を強いられているといえる。