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「アドラー心理学」超入門〜すべての人間関係はヨコの関係である

第一人者・岸見一郎さんに聞きました
courrier編集部

イヤな上司への対処法

アドラーの考えかたでは、「怖い上司」はあなたが作り出している、ということになります。あなたとの関係でだけ、そのおじさんは「怖い上司」になることを余儀なくされているのです。だからあなたがすべきことは、自分の対応のしかたに改善の余地がないか考えることです。

仮に昨日、上司にひどいことを言われたとします。だけどそれは昨日の、終わった話です。これからもずっとそう言われるわけではありません。相手がどうであれ、こっちが深刻になってはいけないのです。次に上司の前に立ったら、「よし、今日はそう来るか」とか、楽しんでやるぐらいの気持ちでいいと思いますよ。

あなたが普通に上司に接すれば、やがては上司も「この人間に対しては、ほかの人に対してするように、特別な自分を見せなくてもいい」と気づくようになります。

 

そもそも偉そうにする上司は、劣等感がすごく強い人なのです。だから、「部下に普通に接したら、馬鹿にされてしまう」と考えてしまうのです。こうした人は、部下の側が普通に接すれば変わるかもしれません。

アドラーは、すべての人間関係はヨコの関係である、と考えます。逆に、無能な上司やその上司を怖がる人は、タテの人間関係を自明のものだと思っているのですね。それを崩すのが怖いのです。だけどタテの関係を崩して、普通のヨコの関係を築くことは可能なのです。そのために必要なのは、勇気だけです。

自分の上司は話も通じない理不尽きわまる人間だ、という人もいるでしょう。アドラーはそんな人のために、「課題の分離」という重要な考えかたを用意しています。

私たちは、何かを選択するとき、常に「これは誰の課題なのか?」という視点から、自分の課題と他人の課題を分離しなければなりません。その方法はシンプルです。

「その選択の結果、責任を最終的に引き受けるのは誰か?」

を考えるのです。そして他人の課題には介入せず、自分の課題には介入させない。そうすれば、対人関係にかかわる問題は一気に解決します。

たとえば、何をしようが怒鳴るだけの上司がいるとします。ですが彼の理不尽な感情は、あなたの課題ではありません。上司が自分で処理すべき課題です。あなたがすべきことは、自分ができる仕事をきっちりこなすことのはずです。上司の感情に対応することは、あなたの仕事ではありませんよね。

自分でできることとできないことを見極める。アドラーはこのことを「肯定的なあきらめ」と表現しています。

逆に、上司の理不尽な命令のままに働いて、結果として大トラブルが起こったら、あなたはその責任を引き受けるのですか。きっと上司のせいだ、と思うことでしょう。

そんなあなたは、原因論に縛られ、仕事に失敗する口実として、上司の存在を用意しているのです。これを目的論に即して考えれば、あなたは「真っ当な仕事ができない自分を認めたくないから、理不尽な上司を作り出している」ということになるのです。

そのとき、あなたは上司という言い訳を用意して責任転嫁をする、「人生の嘘」に陥ってしまっているのです。

あなたには過去も未来もない。「今、ここ」を生きよう!

あなたの人生に対して、他人に責任を負わせてはいけません。同様に、過去の自分も他人です。「あのとき決めたから」というのも、過去の自分に責任を負わせて逃げる、「人生の嘘」です。過去は現在を縛るものではないのです。

同様に、未来で現在を縛るのもいけません。「いつか本気を出す」と、決断を先のばしにする人がいます。この人は「決断したくない」という目的を隠しているのです。決断したくないのなら、誰かが指示してくれるのを待つしかありません。だけど、人に決められた人生を送って、何が面白いのでしょうか。

もし選択を迫られたら、より後悔しそうな選択肢を選んだほうがいい。だって、どっちにしたって後悔するに決まっているんですから。でも、何もしないで後悔するのは「人生の嘘」に陥ることです。そうではなく、後悔するような選択肢を、自分で引き受ける覚悟を持つのです。後になって間違いに気づいたら、進路変更すればいいだけの話です。大事なのは、責任転嫁しないということです。

つまり、あなたも私も「今、ここ」を真剣に、全力で生きるべきなのです。

過去に何があっても、「今、ここ」には関係ありません。未来に上司が怒るかもしれないなんてことも、「今、ここ」で考えるべき課題ではありません。

隠された目的を直視して、「人生の嘘」を振り払い、勇気を持って責任を引き受け、ヨコの人間関係において周囲に働きかける。そうすれば、あなたも世界も、すべてがシンプルになる。アドラーは私たちにそう教えているのです。

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CONTOUR(コントゥール)2017
日時:2017年4月15日(土)12時開場 13時開演
場所:講談社講堂(東京メトロ有楽町線「護国寺」6番出口徒歩0分)
登壇者:
「歴史」担当 出口治明(ライフネット生命保険株式会社代表取締役会長兼CEO)
「哲学」担当 岸見一郎(哲学者、『嫌われる勇気』『幸福の哲学』著者)
「テクノロジー」担当 石黒浩(ロボット工学者、大阪大学教授、ATR石黒浩特別研究室室長)
「デザイン」担当 山口絵理子(株式会社マザーハウス代表取締役兼チーフデザイナー
「音楽」担当 宮沢和史(元THE BOOMボーカリスト、ミュージシャン、作家)
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