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「アドラー心理学」超入門〜すべての人間関係はヨコの関係である

第一人者・岸見一郎さんに聞きました

19世紀生まれのユダヤ系オーストリア人心理学者、アルフレッド・アドラー。「自己啓発の父」として注目されているその思想を、第一人者が明快に講義する。

本記事は「COURRiER Japon」2014年9月号に掲載されたものを、2017年4月15日に岸見一郎さんが登壇するイベント「コントゥール2017」開催を記念して再録したものです。

アドラー(1870-1937)は、かつてはフロイトとともに研究していたのですが決別し、独自の「個人心理学」を構築した人物です。その学説はフロイト理論とは大きく異なり、たとえば苦しみの原因を「トラウマ」に求めません。いや、アドラーはそもそも原因を求めることすら否定します。

どういうことなのか、これからの説明で理解していただければ、あなたの人間関係も一変することでしょう。

隠された目的と「人生の嘘」

たとえば、「結婚は二人だけの問題じゃない。両家の両親に祝福されないと」という女性。アドラーはこのような姿勢を否定します。

なぜなら、これは自分の人生の選択を他人のせいにする姿勢だからです。この女性は、結婚生活が失敗したら親のせいにするでしょう。つまり、はじめから責任転嫁するつもりなのです。

アドラーはこれを「人生の嘘」と厳しく批判しています。

もしあなたが「人生は複雑で大変だ」と考えているなら、この「人生の嘘」に陥っている可能性があります。

 

結論から言いましょう。あなたは自分の人生を、自分の責任だけで選択しなければいけません。そうすればすべてがシンプルになります。そうできず人生を複雑にしているのは、ほかならぬあなたなのだ、と認識してください。

そうはいっても、私には過去にこんなトラウマがある。だからこうするしかないんだ。そんな反論も聞きます。自分のややこしい選択には原因がある、ということですね。

しかし、アドラーはこうした「原因論」を否定します。トラウマは嘘なのです。もちろん、過去の出来事が今の自分に影響していることはあるでしょう。ですが、何かの行動を過去が決定した、ということは断じてありません。

すべての行動には目的があります。つまり「目的論」です。何かの行動に、たとえばトラウマのような原因を求めるという思考は、この目的を隠しているのです。

たとえば、「怒る」という感情は目的があって作り出されたもので、何かの原因によるものではありません。猛烈に子供を叱っている母親は、その行為で子供を屈服させたいという目的があって怒っているのです。子供が不始末をしでかしたという原因で怒っているのではありません。

その証拠に、叱っている母親が、担任の先生からの電話を受けた瞬間、急に上機嫌な声で受話器に話しかけた様子を覚えている人も多いでしょう。つまり、母親は感情に支配されてはいなかったのです。

恥ずかしい話ですが、かつての私自身も、ある職場で、「ここは私がいないと回らないから」という原因を捏造(ねつぞう)し、上司と合わないことがわかっていたのに、3年間も勤めたことがありました。

「頑張っている自分を認めてほしい」という隠された目的を持っていたのです。その欺瞞(ぎまん)は、私が体を壊して辞めるという結末を呼び込んでしまいました。

あのころ、私はガマンしていたのかもしれません。ですが、私の例でわかるとおり、ガマンする必要はありません。なぜなら、あなたのガマンは相手に伝わらないからです。

勝手なもので、ガマンしている人に限って、やがて「こんなにガマンしてるのに、わかってもらえない」と不満に思うのです。これは不健康ですよね。だから、ガマンするぐらいだったら、思いをきちんと言ったほうがいいです。

怖い上司にひどいことを言われた。でも言い返せない。ガマンしよう。しかしながら、そのガマンは上司に伝わりません。上司は相変わらずひどいことを言うでしょう。

あなたはそのような事態を好んで作り出しているのです。