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リスカ癖の彼女様と、必ずメンヘラ女と付き合ってしまう僕の馴れ初め

されど愛しきお妻様【2】

「大人の発達障害さん」である「お妻様」と、ルポライターの鈴木大介さんの涙と笑いの半生を辿る本連載。今回は、お二人のインパクト大な馴れ初めを執筆していただきました!

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ファクスもコピーも取れない

世紀末の1998年の僕は、人生の再起をかけて、都内にある少々ブラックな編プロ(編集プロダクション)に勤めていた。

その会社の社長に拾われるまでは、出版業界の底辺を転々としながら下積みし、「取材執筆兼カメラマン兼レイアウトから印刷フィルムの訂正まで、雑誌1冊丸々やれます」という、要するに何のプロでもありませんというフリーランスとして独立するも、時期尚早にして実力不足。いくつかの取引先と縁が切れたり担当していた雑誌が廃刊しただけで、貧乏の真っただ中に落ち込んだ。

悪い先輩の縁だけは豊富だったので、あれこれ日銭を稼いで何とか食いつなぎつつ借金取りに追われつつ。

 

そんなどん底ブラックな日常から拾ってくれた会社だから、たとえ10日ぐらい会社に泊まり込みで帰れない日が続いていても、会社の給湯室がふろ場代わりになっていても、当時の僕にとっては「ホワイト」だった。埋もれるほどの仕事があるだけで、毎月の給料が遅配なく施されるだけで、ありがたいと思っていた。

そんな中で、奴はやってきたのだった。その後僕のお妻様になった奴は、当時19歳。この編プロにバイトとして入ってきたのが馴れ初めだ。ちなみに、当初から彼女になんらかの障害があると知っていたわけじゃなかった。

第一印象は、やかましい! ただただ彼女は、猛烈に落ち着かなく騒々しい女の子だった。

見事に毛先バッサバサのブリーチ金髪ヘアに、ソフト目なパンクスファッションに身を包み、小柄でガリガリに痩せた手足。膝小僧に小学生男子みたいな青タンと絆創膏。

なにせ忙しい会社だから社内で走る者は少なくなかったが、奴が走れば、その体重でなんで?と突っ込みたくなるほどバッタバッタと走る厚底靴の騒音。机から顔を上げずとも奴がどこにいらっしゃるのかわかる。しかもなぜか、走るフォームはがに股である。

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何度教えてもファクスは裏表を間違えるし、コピーを取らせればいつだって傾いているし、遅刻ばかりしやがる癖にコピーを取っている間にコピー機に寄りかかってウツラウツラと寝てることも多い。

近所の書店に資料書籍を買いに行けと金を渡せば、何時間も帰って来ない。何か事故でもあったかと心配するころにようやく帰ってきたと思えば、何故かその手にガシャポンのカプセル満載のビニール袋。

「それは何ですか?」

「ざっつガシャポンです」

見りゃわかるわ! 問いただせば本屋にお目当ての本がなかったのでガシャポンに突っ込んだと悪びれずに言うが、貴様それは立派な業務上横領である。

日々こんな糞伝説を作り上げるものだから、編集部内では頻繁に彼女を怒鳴る編集部員の罵声と、呼ばれて社内を走る彼女の足音が響いていた。

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