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防衛・安全保障
防衛省・南スーダン日報隠しの「深層」
元凶は、稲田大臣の統率力不足か

かくも軽視されている大臣

南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣している自衛隊の「日報隠し」の背景に、稲田朋美防衛相の統率力不足があるとの見方が防衛省内に広がっている。「仮に防衛大臣が稲田氏でなければ、違う結論になったかもしれない」と話す幹部もいるほどだ。

森友問題も絡んで稲田防衛相の国会答弁は迷走、国政の混乱に拍車をかける中心人物の一人になっている。防衛省内には突然の撤収を発表した安倍晋三政権に対する不信感も浮上。さらに、ある政治家主導で断行した防衛省改革が「裏目に出た」との批判も飛び出し、不穏な空気が流れている。

日報は現地部隊が電子データとして作成し、陸上自衛隊のシステムを通じて海外派遣司令部にあたる中央即応集団に送っていた。担当者が日報をもとに毎日つくるレポートに反映させた後、削除していた。

情報公開請求に対し、昨年12月「廃棄を理由に不開示」としたが、その後、陸海空自衛隊を統合運用する統合幕僚監部のコンピューター内に保管されているのが見つかり、今年2月7日に発表した。野党が「隠蔽ではないか」と追及する中、安倍内閣は今月10日、突然、南スーダンからの撤収を発表、猛追から逃れるような急展開をみせた。

ところが、15日になって日報は陸上自衛隊にも保管されており、統合幕僚監部の幹部の指示で消去していたことなどが次々に報道され、隠蔽疑惑が濃厚に。「ないもの」が「ある」と変わるのは勘違いで済むかもしれないが、「あるもの」を「ない」と言い続けたのだから隠蔽と批判されても仕方ない。

稲田防衛相への省内の対応で奇妙なのは、統合幕僚監部が昨年12月26日に日報を発見しながら、今年1月27日まで一カ月も稲田氏に報告しなかったことだ。担当者は「黒塗りに時間がかかった」と話すが、防衛大臣に見せるのに黒塗りが必要だとすれば、稲田氏はどれほど信用されていないのか。

 

野党の追及を受けている最中に、陸上自衛隊でみつかった日報を破棄する指示が省内から出されていたわけで、これに稲田氏が関わっていないとすれば、どれほど防衛大臣としての存在を軽視されているのか。

日報とは別問題ながら、稲田氏は森友問題で「籠池氏の事件を受任したこともない」「裁判を行ったこともない」(13日参院予算委員会)と無関係を主張したが、大阪地裁の出廷記録が報道されたのを受けて「夫(稲田龍示氏)の代わりに裁判所に行ったことはあり得るのか」と前言を撤回した。

極めつけは「私の記憶に基づいた答弁であり、虚偽の答弁をしたという認識はない」と開き直ったことである。「記憶」と主張すれば事実に反しても問題ないというのだ。消費税増税を公約しながら二度にわたって延期し、「これまでの約束とは異なる新しい判断だ」と述べ、公約違反を「新しい判断」で上書きした安倍首相と通じるものがある。

稲田防衛相は日報問題を省内の特別防衛監察に委ねると発表した。結論を先延ばしして野党からの追及逃れを図るだけではない。自身が火の粉をかぶらないよう部下を切り捨てる一石二鳥の作戦とみられている。

防衛省幹部は「稲田氏は護衛艦に乗るのにハイヒールで来たり、南スーダンに派遣する部隊の演習視察に白パンツ姿で来たりで常識を疑いたくなる。昨年は沖縄行きや南スーダン行きをドタキャン。何かあると部下に当たるので腫れ物に触るようにしている」と明かす。「お姫様」のやりたい放題が面従腹背を招いているとはいえないだろうか。