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企業・経営

「一流」と呼ばれる人は、なぜ瞬時に大きな決断を下せるのか

1%の成功者が忘れていない二つのこと

とてつもない偉業を成し遂げた人たち。かれらは普通の人と、どこが違っているのか。一般には明かせない秘密の方法があるのか。36人の「一流」について調べた戸塚隆将氏が、そのひとつの答えをまとめたのが『世界の一流36人「仕事の基本」』だ。戸塚氏が導き出した結論とは?

魔法はない。「基本」があるだけ

新生活シーズンがスタートします。希望に燃えて一歩を踏み出す方、残念ながら思うような結果が得られずに仕切り直しの方、それぞれの春があるかもしれません。いずれにしてもこれから良いスタートを切りたいと考えるみなさんに、誰にでもできる仕事の基本をご紹介したいと思います。

世界には圧倒的な成果を上げる「一流」と呼ばれる人々がいます。私たちから見ると、かれら一流人はスーパーマンさながらです。短時間で大きな決断をし、大きな成果を上げています。かれらが「天才」だからでしょうか。それとも私たちにはとうてい真似できない「魔法」があるから成功がついてくるのでしょうか。

そうではありません。かれらも悩み、ときに葛藤する「普通の人間」です。かれらの仕事ぶりを分析すると、「仕事の基本」を徹底することで物事を成し遂げてきたのだとわかります。しかもその基本とははごくあたりまえの、私たちがふだんやっていることなのです。

例を挙げましょう。大きな決断を迫られている人ほど決断が早いと感じたことはないでしょうか。

私は投資銀行に勤務していた20代半ばに、それを象徴する仕事を経験しました。日本を代表する経営者による異業種買収プロジェクトでのことです。その経営者がトップを務めるクライアント企業に対し、買収の助言をするのが私たちアドバイザリーチームの役割でした。

買収に名乗りを上げれば、すぐにテレビや新聞で報道されます。買収の目的やビジョンについての説明を求められます。場合によっては株価が下落するおそれもありました。それでもその経営者は真っ先に手を挙げたのです。そのスピードは、他に名乗りを上げようとしていた会社に比べて群を抜く速さでした。

なぜその経営者は短時間のうちに大きな決断ができたのでしょうか。

その方は当時、異業種から参入することで業界を活性化させ、イノベーションを起こそうというヴィジョンを明確にもっていました。しかしこの買収は会社が成長するか、それともつぶれるかの大きなリスクをともなう選択でもありました。経済合理性だけを考えるなら、買収などあり得ない案件だったのです。

 

では何がその経営者の背中を押したのか? 私は「情熱」こそがかれにとっての決断の指針だったと思っています。その経営者は明確なヴィジョンに加え、自分たちがそれを実現するのだという猛烈な情熱をもち合わせていました。だからこそ覚悟をもって大きな決断を瞬時に下せたのだと思います。

「決断が早い」という点でもう一人思い出すのが、投資銀行時代の私のかつての上司です。実績豊富なインベストメント・バンカーで、企業買収のニュースが朝刊で報じられると、朝一番で相手企業に躊躇なく電話するのが特徴でした。

ただ「うちにやらせてください」ではなく、プラスアルファの提案を添えることも忘れないのです。仕事に情熱を持ち、日頃からクライアントの業界にアンテナを張って準備していなければ、朝一に提案などできるものではありません。

実際、この上司の口癖は「準備が大事」でした。

その言葉どおり、10社20社が参加するコンペのプレゼンではすさまじく念の入った準備をしていました。スクリプトを練りに練って一字一句を吟味し、想定問答を作り、誰がどのタイミングでどんな話をするかも事前に決めておく。そして繰り返し練習し、本番に向けてプレゼンを磨き上げていきます。

人を驚かせるアドリブも華麗なパフォーマンスもない、一見すると地味なプレゼンです。しかしクライアントに何をどう伝えるかという点が考え抜かれており、説得力十分でした。この上司がコンペにめっぽう強かったのです。

情熱をもち、準備をする

私は仕事で出会ったこのお二人から、大切なのは「情熱」と「準備」であると学びました。じつはこの2つは世界の一流人も実践している「仕事の基本」です。ただその徹底の度合いが私たちとは違うのです。1%の一流人と残り99%の人の違いはここにあるのだと思います。

そこで思い出されるのがアマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏の言葉、「In the end, we are our choices.(つまるところ、人はそれまでの人生で選択したことの総体である)」です。

Amazonの創業者ジェフ・ベゾス氏 Photo by GettyImages

かれはgift(与えられたもの)とchoices(自分で選択したもの)の2つを比較し、自分で選択したものこそが人生だと語っています。そして周りに流されず積極的にchoicesを積み重ねなさい、その土台として情熱が大切だ、とも言っています。

ウォール街の金融機関で誰もがうらやむ高額報酬を得ていたベゾス氏は、オンラインブックストアの構想をあたためていました。

かれはある日、当時の上司にこのアイデアを相談します。ところが上司からは再考をうながされたそうです。高額報酬を得られる仕事を捨てて起業するべきか否か。ベゾス氏は考え、相談からわずか48時間後に起業を決断しました。

当時をふり返り、かれはこう話しています。「自分の情熱に従って、無難でない道を選んだ」。その後のアマゾンの成功はみなさんもご存知のとおりです。キャリアや人生において複数の選択肢に直面することは誰しもあります。そんなとき、「情熱」を指針に決断するやり方は私たちにも大いに参考になりそうです。