ブルーバックス

謎多き日本最大の科学研究所「理研」、その全貌とブッ飛びの研究成果

ここに日本の未来がある!
山根 一眞 プロフィール

スパコン「京」の知られざる成果

「世界一になる理由は何があるんでしょうか。2位ではダメなんでしょうか」という蓮舫参議院議員(現・民進党代表)の歴史に残る迷言で危うく潰されそうになったのが、スーパコンピュータ「京」だ。

これも理研が作り、運用してきた大きな柱だ。

2013年1月15日、完成から半年目のスパコン「京」。背後から撮ったレア写真〔写真〕山根一眞

だが、それによる研究成果をすらすらと口にできる人は少ない。

無償で研究者が利用した場合は成果の公開が原則だが、企業が有償で駆使した場合は成果は公開しなくてよい。そのため、企業がスパコン「京」で開発した製品の多くは、ベールに隠されたままなのだと知った。

たとえば、自動車であれば、格段の空力特性で低燃費、衝突事故によるダメージを軽減するボディなど、スパコン「京」が大いに役立ったとしても、メーカーはそんなことは言わないからだ。

自動車の衝突実験を「実車」のみで行った場合と比べると、スパコン「京」によるシミュレーションによって日本の全メーカーは年間1000億円以上のコスト軽減ができているはず、とも聞いた。

 

一方、積極的に成果を公開している珍しいメーカーがある。住友ゴム工業だ。

住友ゴムは、スパコン「京」を駆使して自動車タイヤのゴムの分子の動きをシミュレーションし、理想的な省エネタイヤを開発、発売した。もし、日本中のクルマがこの省エネタイヤを使えば、日本全体でのガソリンの節約額は8000億円にのぼると試算されていた。

この省エネタイヤの開発のためには、ゴム内部の分子構造を見る必要があった。そのために利用したのが、理研の「SPring-8」と「SACLA」だった。

たとえ話だが、「電子顕微鏡の1億倍よく見える」と言われるX線分析装置が世界最大規模の「SPring-8」(放射光実験施設)で、さらにその1億倍よく見えるとしてデビューしたのが、世界最高性能の「SACLA」(X線自由電子レーザー施設)だ。

2010年9月、完成間近のX線自由電子レーザー施設「SACLA」の内部を見た〔写真〕山根一眞

その「透視」で得た分子の挙動データをスパコン「京」にぶち込むことで、超省エネタイヤの作り方がわかったのである。