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ライフ 週刊現代 日本
お茶屋遊びはいくらかかる?知らないと痛い目に遭う「京都のお値段」
あの土地の秘密も、教えます。

「京都のおねだん」はわかりにくい。料金表もなければ、請求額は店と客の阿吽の呼吸だったりする。一見さんが思わぬ高額をふっかけられることも。京都人の本音を知れば、その真実が見えてくる。

よそ者には一生、わからない

「なぜこれがこんな高いのか、なぜあれがあんな安いのか、それが無料なのか、あるいはそもそもこんなものあんなものにどうしておねだんがつくのか――京都では往々にしてそういうよくわからない局面に出くわします。

京都人は何にどれだけ支払うのかという価値基準が、ほかの地域とはいささか異なっているように思えます。京都についてエッセイの依頼を受けた時、大阪生まれの私が都のことを書くなどおこがましいと、一度は断わりました。

しかし、もしかしたら、京都の値段を知ることは、京都人の思考や人生観を知ることになるかもしれない。それが本を書く動機になりました」

世界一の観光都市とも言われる京都。観光客数は5500万人を超え、イギリスの旅行専門誌『ワンダーラスト』の調査では旅行満足度第1位に選ばれている。外国人客や観光客をもてなす質は高く、こぢんまりとした飲食店でも店先に価格の書かれたメニュー表を掲げるなど明朗会計の店は増えた。

一方で、少し街の中に足を踏み入れれば、まだまだ京都はよそ者には理解しがたい「不明朗」な顔を覗かせる。京都人はしばしば、「いけず」の人たちと評されるが、「おねだん」でもその精神が発揮されることがあるのだ。

そんな京都人が隠しておきたい京都の秘密に迫ったのが、『京都のおねだん』だ。

冒頭のように語るのは、著者で映画研究家・脚本家の大野裕之氏。大阪出身の大野氏は、京都大学進学とともに京都に住みはじめた。京都生活は二十余年を数えるが、知人には名家の跡取りも多く、自虐的に「京都人見習い」を名乗る。

同書では大野氏が、京都で初めて提供された抹茶パフェの値段、伝統工芸品の価格、「仕出し」と呼ばれる太秦撮影所のエキストラのギャラなど、この街特有の様々な「おねだん」を通じて、京都人の姿に迫っている。

大野氏がいくつか印象深い「おねだん」を語る。

 

資本主義が通用しないお茶屋の「おねだん」

価格がわからない。その代表的な例がお茶屋遊びだ。舞妓・芸妓は京都の象徴とも呼ぶべき存在だが、お茶屋遊びのおねだんはいくらなのか。

同書には、大野氏がこの道二十年の知人Aさんの紹介で、ともにお茶屋遊びをした際の請求書が掲載されている。舞妓、芸妓、地方(三味線などの音楽を担当)の3名に、仕出しのお食事、舞、お座敷遊びを堪能した6時間半に及ぶ大宴会の請求書の内訳はこうだ。

〈お花代 12万1176円
ご飲食代 7万1820円
宴会ご祝儀お立替 5万1840円
合計24万4836円〉

請求書を握りしめた大野氏はお茶屋の女将のもとへむかい、詳細を問う。

「お花代は、芸妓・舞妓・地方と3人合計の代金で、一人あたり3万7400円。

私の場合、夕方5時半から夜の12時までお世話になったので、相場は宴会花の3万~4万円+二次会2万円程度で、5万~6万円になるそうです。しかし、あらかじめ決まったおねだんはない。

その他も説明を受けた通りの相場で勘定しなおすと、請求額はだいぶお安くしてもらったようでした。女将は『また来ていただきたいと思いまして、そうさしてもらいました』と言ってましたが、Aさんのご紹介ということで、特別価格になっていたのでしょう」(以降のカッコ内のコメントはすべて大野氏)

定価はいくらか。その問いは無粋だ。客によって、お茶屋によって違うから、定価とは何かと尋ねられても一概には言えない。

「実際、ある芸妓さんに、『金額を決めているほうがおかしいと思います。だって、どれぐらい飲まはるのか、何人で来られるのか、わからしまへんもん』と言われました」

客によって、人によって、値段が変わる。これが花街の流儀なのである。