学校・教育 行政・自治体

同志社大学の名物教授が「突然の退職」を通告されるまで

【ルポ・大学解雇】
田中 圭太郎 プロフィール

誹謗中傷、罵詈雑言

研究室の郵便受けに「臨時専攻会議の通知書」が投函されていたのは2013年10月のこと。この通知をみてはじめて、浅野氏は自身の定年延長が認められないことを知った。

この決定を下したのは、浅野氏の同僚だったメディア学専攻の教授4人だ。浅野氏の定年延長を教授会に提案しない一方、別の教授(現在は退職)の定年延長は、承認された。

これは不当だと思った浅野氏が自ら定年延長を訴えると、教授会の議長から浅野氏の定年延長が提案され、審議が行われることになった。すると、浅野氏の退席後に、メディア学専攻の教授によってある文書が教授会の出席者に配られた。文書の存在をあとから知った浅野氏は、その内容を見て愕然としたという。

「浅野教授 定年延長の件 検討事項」と題したA4サイズ2枚の文書には、冒頭、次のように書かれている。

『研究者としての能力、論文・著書の内容の学問的質に問題がある。「運動」としての活動はあっても、大学院の教授の水準を満たす研究はない』

 

この書きだしから始まる文章は、ほとんどが浅野氏に対する誹謗中傷で占められていた。

・論文の内容には、客観的根拠がない推測による記述が多く含まれ、学術論文として不相応。
・大学院教授として品位に欠ける表現。
・院生・学生本位の教育がなされていない。
・貢献度が低く、逆に周囲の足を引っ張っている。

浅野教授への「誹謗中傷」が書かれた通知書

文書には「教授の水準を満たす研究はない」と断定的に書いているが、浅野氏が大学院の教授に就任して20年が経とうとしている。「教授の水準」は採用当時に大学が認めているのであろうし、あまりに論拠に乏しいものではないだろうか。

さらに<学科内の職場環境を極めて不正常にさせている>という項目では、こんな記述もある。

「専攻科の各教員は(浅野氏によって)常時強いストレスにさらされている。(中略)これによる突発性難聴や帯状疱疹などの発症(が認められる)」

言うまでもなく帯状疱疹はウイルスによって起きる病気であり、突発性難聴は原因不明とされている。それが浅野氏のせいだというのは、言いがかりでしかないだろう。要するに、別の学部の教授に「浅野氏がいかにひどい人物か」を印象付けるために、何の根拠もない罵詈雑言を並びたてているだけなのだ。

浅野氏はこの文書を作成し配布したとして、メディア学専攻の当時の教授5人に対しても名誉毀損訴訟を起こし、現在京都地裁で争われている。

後日の教授会で、再び浅野氏の定年延長が審議された。通常、定年延長は承認だけで決まっていたので、可決要件についての規定はなかったが、その場で「3分の2以上の賛成で可決」する無記名での投票が提案された。

投票の結果は「否決」。浅野氏は投票の際に退席させられたため結果だけ通知されたが、投票数などは明らかにされていない。