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「大人の発達障害さん」であるお妻様と「脳が壊れた」僕の18年間

【新連載】されど愛しきお妻様
鈴木 大介 プロフィール

ガッツ石松♪ ガッツ石松♪

やれやれ。トイレに入ったっきり出て来ないのは、多分トイレの中に積んである『発光する深海生物図鑑』だとか『日本の猛毒を持つ生物図鑑』だか謎の蔵書を読んでいるのだろう。ようやくトイレから出てくると、紙パックのココアを冷蔵庫から出してひとくち。

僕の坐る茶の間テーブルの隣に坐ると、ぼんやりしながらゆらゆら揺れている。どうやらまだまだ脳は起動準備中らしい。

ちなみにお妻様の毎日の朝ご飯は、バナナと牛乳と豆乳をミキサーで混ぜた特製バナナジュース。ご自分でお作りになることになっている。

目を閉じて船をこいでいるので「バナジュー飲みなよ」と話しかけると、僕の声に反応してニャーと寄ってきて立ち上がる猫と手を合わせて「ハイタッチニャー」。え、猫とハイタッチして、俺の言葉は無視っすか!?

photo by iStock

その後も観察を続けた結果のお妻様の行動はこんなである。

前日に僕が飲んだ安物ワインの瓶にじっと見入る。

瓶を置いて、そのままテーブルに突っ伏し、ガバッと起き上がって深いため息一発。

起床から16分、再び天井を見上げて「あのもっ君(クモ)はどうするべき? 戸棚の中に入ってくれればいいんだけど」(床に降りてきて猫に惨殺されるのを心配しているらしい)。

再びワインの瓶を手にとり、「子鹿?」(瓶に描かれた『プードゥ』(小鹿)のシルエットが気になっていたらしい)。

最も太った猫を膝に抱えあげ、フヨフヨの猫腹に額を埋めていると思いきや、唐突に「ガッツ石松♪ ガッツ石松♪ ね〜ガッツ石松だよね〜」と猫と会話。意味が分からん。

「なにそれ?」と聞けば、

「あれガッツ石松じゃん?」

答えになっていないわ! 

「だから何それ?」

「いまお外でトラックの人がバックしてて、バックします、バックしますって警告音がガッツ石松なんだよ(って聞こえるんだよ)」

 

へえーそうですか。僕は君に早くバナナジュース飲んで欲しいんだけどな〜〜。イライラ。

ちなみに超省エネな体質のお妻様は、朝(?)のバナナジュースを飲むと、その次に食物が食べれるようになるのは4〜5時間後。無理に食べると逆流性食道炎を起こすという持病もある。我が家では炊事は僕の担当なので、お妻様の朝バナナが遅れれば遅れるほど、僕が1日の家事を終えて休める時間が遅くなる。

そして起床24分後、ようやく立ち上がったと思いきや、ブラシを取り出してボッサボサの髪をとかし出すお妻様。

「あー、お風呂入らなきゃ…」って確かに君、そのツヤッツヤのキューティクル(脂)、いつから風呂入ってねーんだこのヤロー。

再び猫がニャー。「お前ごはんなの?」どうやらさっきのターンで餌を食べなかった猫が食事らしく、座り込んで餌を食べる猫の背中にある小さな円形脱毛をチェック。俺はね、猫じゃなくね、貴様が飯を食うのをね、一生懸命待っているんだけどね……。

猫のご飯が終わるのを見届けると、居間の座椅子に移り、タブレットでメールチェックを開始。なし崩し的にSNSチェックなど始めてしまっているらしい。

「で、お妻様は何をしているのかな?」

「Facebookとかメールとか見てるよ」

「それはバナジューのあとじゃ駄目なのかなあ?」

「ごめん」
 
でも、動かないお妻様。あー、イライラ。