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「大人の発達障害さん」であるお妻様と「脳が壊れた」僕の18年間

【新連載】されど愛しきお妻様
鈴木 大介 プロフィール

41歳で脳梗塞で倒れたものの、懸命なリハビリの末に見事現場復帰したルポライターの鈴木大介さん。鈴木さんが高次脳障害を受容するまでの行程を描いた記事は大反響を呼びました(こちらからお読みいただけます)。

そんな鈴木さんが、待望の新連載をスタート! 主役は、鈴木さんの闘病生活を支えた「お妻様」。鈴木さんと「家事力ゼロな大人の発達障害さん」だった「お妻様」が悪戦苦闘しつつ、「超動けるお妻様」になるまでの笑いあり、涙ありの日々を毎週お届けします。

15時16分、お妻様起床

フリーランスの執筆業なので、自宅2階の寝室隣が、職場という名の仕事部屋。特に打ち合わせや取材などで外出予定がなければ、朝7時の起床後に1階茶の間に降りて軽く掃除だけやって、すぐに仕事部屋にこもる。

誰に管理されているわけでもないが、1日の理想のスケジュールは、軽食をとりつつも15時ぐらいまで集中して、1日のタスクの大半をこなしてしまい、残りの時間は休息タイムと若干の推敲作業にあてるというもの。

何日かぶりに、そんな理想モードで仕事が終わった年の瀬のある日、15時16分。午後の陽射しと淹れ立て珈琲の香りも快適な1階茶の間に、奴らがやってきた。

ダバダバ、ニャー、ドスドス、ニャッパー。

photo by iStock

階段を駆け下りて茶の間に駆け込んでくる、合計23キログラム、5匹の猫。そして、猫に遅れること数秒で、

「はよーざまー」(おはようございます)

と気の抜けた声で入って来るのは、奴らの主。

頭ボサボサで半分目が開いていないパジャマ姿の我が「お妻様」、おん歳38歳である。様がついているのは、ヤツは怒らせると怖いというか、むやみにしつこいからである。

全然おはような時間じゃないが、お妻様は宵っ張り体質でたいがい朝方まで起きていて、この時間まで猫5匹と寝室で絡まりあっているのが平常運転。パジャマ姿なのも平常モードで、お妻様は基本的に外出予定がなければ1日中寝間着のままだ。ていうか貴様、なぜ今日「も」靴下片っ方しかはいてないのだ。

面白いので観察しよう。

 

まず3桁まで血圧が上がることがない超低血圧のお妻様は、ここからの起動に時間がかかる。大昔のメモリが足りない安物パソコンみたいに、なかなか起動しない。

窓辺に歩み寄り、陽射しを仰いで「溶ける〜」と呟きながら庭のポストを確認しに行き、戻ってくると猫5匹に絡みつかれながら猫水の入れ替えと、5匹分の猫飯を皿に計量。見ればその目は未だまともに開いていない。

もつれる足でトイレに行く道すがら、

「こんにちは〜」

誰と話してるの!? と振り返れば、天井を見上げて「君はここで越冬するつもりかい?」

視線を追えばクモさんである。

お妻様はクモを見ても、キャーともギャーとも言わない。家の中にクモがいるのは我が家が農村の緑に囲まれたボロい中古住宅だからではなく、お妻様がクモさん大好きだからである。

この家に越して来る前のアパートでは色とりどりのハエトリグモに「もっくん1号」「もっくん2号」などと名前を付けて、荷物と一緒に引越してきたぐらいだから、天井の角や鴨居にクモが張った巣を僕が掃除すると「なにしてくれとんじゃー!」とお妻様はめっちゃ怒る。

そのため我が家の端々には彼らが自由自在に巣を張り、ただでさえ古い家が少しホラー風味だ。時折、子どもの手の平ぐらいあるアシダカグモが猫どもと大バトルを繰り広げていたりもするから、虫が苦手な方には冗談抜きのホラーハウスである。

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