企業・経営 週刊現代

三越伊勢丹HD社長・大西洋氏「突然クビ」の全内幕

辞任の3日前、 本人が語った「悔恨」
週刊現代 プロフィール

業績の不調を挽回すべく、大西氏は百貨店の変革と同時に、新規事業で売り上げを立てる道も模索してきた。合弁でブライダルや飲食の新会社を設立した。

しかし、この新事業に対しても、現場から反発の声があがった。三越伊勢丹の幹部社員が不満を漏らす。

「ただでさえ現場に人が少なくて、課長クラスの人間が顧客のクレーム電話に対応するなんてこともある。新店舗ができる時にも人が増えるわけじゃないから、『人員増なき新店舗』なんて言われています。そんな状況で、社内イントラには次から次に『新会社設立のお知らせ』が届く。『で、誰がやるの?』という感想しか浮かびません」

だが、こうした新規事業をめぐる混乱は、大西氏だけの責任とは言い切れない。「伝統とプライド」に固執し、変化を嫌う三越伊勢丹の企業風土も関係しているのではないか。そう指摘するのは、前出の南氏だ。

「基本的に三越伊勢丹というのは、伝統を大切にする企業。新たな事業に対しては消極的な人が少なくないと思う。そうした土壌では、大西さんが行っていたような矢継ぎ早の改革に違和感を持つ社員が出るのはうなずけますし、間接的には、それが今回の辞任につながったという見方もできる。

しかし一方で、大西さんがやろうとしたのは、ジリ貧の部門をカバーするために新しい事業に進出すること。『百貨店を残す』ことを選び、会社の生き残りを図るためには必要なことだとも思います」

Photo by GettyImages

「優等生」新社長の手腕

大西氏は、様々な面で新しいビジネスにチャレンジしようとした。本来ならこうした挑戦をする場合、社内の重要な人物を押さえ、「根回し」や「政治」をすることが重要になってくる。しかし、大西氏がそうしたことを苦手としていたことも、今回の辞任劇につながった可能性がある。前出の幹部社員も言う。

「大西さんは、本人も『自分は社長になろうと思わなかった』と認めるとおり、社内政治で味方を増やしてのし上がってきたタイプではない。むしろそういった政治が苦手。

それに、大抜擢で社長になったため、長年連れ添った参謀、右腕といった存在がいなかったようです。時折、都内店舗の店長をしている同期入社の社員らに相談をしていたようですが、役員の中にはあまり腹を割って話せる人はいなかったのではないでしょうか。基本的には社内の権力基盤は弱かった」

 

賛否はありつつも「カリスマ」として注目されてきた社長を失った三越伊勢丹。では、新しく社長になる杉江氏はどんな人物なのか。前出の社員が言う。

「もともと経営戦略畑が長く、40代の時に伊勢丹新宿店の食品フロアの改革を成功させ、社内で広く評価されました。自己紹介の時に『僕は入社以来、一度も上司に怒られたことがない』と言うことがあるんですが、実際ものすごく頭が切れ、それに嫌味も全然ない。

しかし一方で、よくも悪くも非常に『優等生的』な人物。社内でも、『杉江さんが就任らしい』という話題が出ても、『どんなことをしてくれるんだろう』といったわくわくした感じはありません」

前出の南氏も言う。

「新社長は『事業の多角化よりも本業の立て直しに力を入れる』と宣言していますが、百貨店一本では難しいからこそ、中身についての賛否はどうあれ大西さんは新事業に力を入れてきたわけです。それを『百貨店一本足』に戻すことには疑問を抱かざるを得ません。どういう戦略を練ってくるのか注目したい」

逆風吹きすさぶ百貨店業界。新社長は大西氏との違いを見せることができるのか。

「週刊現代」2017年3月25日・4月1日合併号より