企業・経営 週刊現代

三越伊勢丹HD社長・大西洋氏「突然クビ」の全内幕

辞任の3日前、 本人が語った「悔恨」
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三越伊勢丹の経営については、百貨店という伝統や文化を大切にする方針を貫いていた。ファッションジャーナリストの南充浩氏が言う。

「ご本人にインタビューをしましたが、百貨店への愛が非常に深い方です。ほかの大手が、百貨店の売上比率を減らし、『貸しビル業』の割合を増やしていく中、三越伊勢丹はいまだに百貨店の比率が90%を超えている。

その分、危機意識も非常に強く、『このままではダメだ』と言うのを何度も耳にしました。自社のオリジナル製品を増やしたり、意識改革のため、社員をベンチャー企業、IT企業などに出向させたりしていました」

しかし、ネット通販が爆発的に拡大し、リアル店舗でもユニクロや家電量販店といった専門店が全国各地にあふれる中、百貨店には強い逆風が吹いている。大西氏の施策はなかなか実を結ばず、特にこの1年は売り上げを落としてきた。

「'17年3月期の営業利益予想は、240億円と前年比で3割減です。大西さんは、中小規模の店舗を地方に積極出店するなどいろいろ策は打っていましたが、いまのところ、どれもそれほど奏功していません。

'13~'15年は、中国人観光客の『爆買い』で売り上げが立っていましたが、ブームが去ると、一気に業績が低迷し、むしろ以前よりも状況が悪化していることが明らかになりました」(前出・記者)

本誌は3月初旬の平日昼、銀座三越を訪れた。'16年1月に「爆買い客向け」としてオープンした8階の免税店フロア「Japan Duty Free GINZA」では、ヴァレンティノ、グッチなどの売り場がまぶしく輝くが、客はゼロ。ほかのフロアにも、日本人の客はほとんど見当たらず、アジア圏からの旅行客が数人歩いているだけだ。

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社内の不満分子が…

働いている従業員は社長辞任について、

「突然のことで、我々もみんなびっくりしています。ただ、社長が替わったとしても2年先まで基本的な商品のラインナップは決まっている。しばらくは特にリニューアルがあるとも思えません」

と淡々と語った。

この免税店フロアを積極的に推進したのは大西氏だが、三越銀座店の売上高は、昨年に比べて5%以上低下している。責任を問う声が社内から出てくるのは必然だった。

さらに、三越伊勢丹の場合、社内に三越派と伊勢丹派の強い対立がある。同社の三越出身の中堅社員によれば、「昨年、ようやく三越の賞与体系が伊勢丹と同じになったばかりで、いまだに社員同士がいがみ合っている」といい、この内紛が、伊勢丹出身の大西氏への反発の声をさらに強めていた。同社員が言う。

「三越銀座店の売り上げが下がっているのは、大西さんが爆買い客への対応に注力するあまり、日本人客の接客をおろそかにしたからだとの批判が、特に三越系の社員から出ていました。お客さんからは、『中国人スタッフが増え、接客のレベルが下がった』といった声が上がっています。

三越は伝統的に、良質な富裕層の顧客という『財産』を大事にしてきましたが、伊勢丹出身の大西社長が、爆買いに気を取られるあまり、その財産を捨ててしまった。三越出身者は、自分たちの伝統を壊されたと感じています」

 

こうした対立によって、「構造改革」のかじ取りも難しくなっていた。前出の記者が言う。

「三越と伊勢丹、どちらかの店舗が閉店されると、それぞれの出身者のモチベーションはどうしても落ちる。今年3月には三越千葉店、同多摩センター店が閉店する予定ですが、これは三越出身者にとっては許しがたいこと。

なぜ自分たちの城ばかりが削られていくのか、と。こうした中で構造改革を進めるには、ずば抜けた経営センスやリーダーシップが必要ですが、大西さんにはそこまでのものはなかった」