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企業・経営 週刊現代
三越伊勢丹HD社長・大西洋氏「突然クビ」の全内幕
辞任の3日前、 本人が語った「悔恨」

カリスマ社長が、突然辞任を迫られた。業績の不調、構造改革による混乱、その責任が問われたとされる。しかし、その裏には、社内に渦巻く三越派と伊勢丹派の対立があった。「百貨店の雄」の深層レポート。

決定打となった「失言」

「私が記者会見で、会社について『構造改革を進めている』と言うと、途端に『じゃあ、お店を閉めるということか』と反応されてしまう。これは……うーん、どうなんでしょうか……。

それで私が、『いえ、構造改革というのはこういう内容です』と具体的なことを説明しても、結局メディアの方は、スピードと見出しのインパクトを重視した取り上げ方しかしてくれない。本来メディアというのは、もっと本質論に踏み込むべきだと思うのです。

日本百貨店協会も月に一度、(売上高などの)数字をリリースで出しますが、『この分野の調子が良かった、悪かった』と書くだけ。

本当は、『今後どのようにマーケットがシュリンクするのか』『どう対策すべきなのか』といった点についてもっと分析すべきです。協会に出向している専務理事にもそう言っていますが、そうした内容が載ることはありません」

三越伊勢丹HDの大西洋社長は、辞任を迫られる3日前の3月1日、本誌にこう語っていた。

普段は快活な大西氏が慎重に言葉を選び、自らの改革プランをネガティブに取り上げるメディアに不満を漏らす。時折うつむくその表情からは、構造改革がうまくいかず、「自分の真意を誰もわかってくれない」という焦りと無力感が窺われた。

結果として見れば、この苦渋と悔恨に満ちた告白は、大西氏の社長としての「遺言」になったと言える。

3月4日の午後、三越伊勢丹HD本社の一室で、大西氏は同社の石塚邦雄会長から、
「構造改革の混乱の責任をとって、社長を辞めてもらいたい」
と告げられ、辞表を突きつけられた。

7日には取締役会が開かれ、大西氏の辞任と、杉江俊彦取締役専務執行役員の社長就任があっさりと決まった。辞任という形を取ってはいるが、事実上の「解任」、クビである。

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経済部の記者が言う。

「三越伊勢丹の内部では、かなり前から大西氏への不満が高まっていました。こうした『反大西派』がクーデターを決意するきっかけとなったのは、昨年11月の決算会見です。

ここで大西さんは、記者の問いに答えて『伊勢丹松戸店、広島三越など4店舗は構造改革の対象となる』と話してしまった。これにほかの役員たちは驚き、一部の人は激怒しました。

大西さんはあくまで大まかな方針を示しただけだったかもしれませんが、それを言ってしまうと、実際に店舗で働いている従業員や取引先からすれば、『閉店するのか』と騒ぎになるのは当たり前のこと。会見で思いつきのように口にすべき話ではありません。

以前からこうした大西氏の勇み足が原因で、『俺たちが知らないうちに物事が既定路線になっていく』と不満が高まっていましたが、これが決定打となり、『大西降ろし』への動きが本格化したのです」

 

銀座三越免税フロアの悲劇

大西氏は「カリスマ社長」として知られる業界の有名人である。前出の記者が解説する。

「大西社長は伊勢丹出身。紳士服のバイヤーとして活躍し、『伊勢丹メンズ館』を成功に導いた立て役者です。'12年に56歳で三越伊勢丹HDの社長に就任しました。婦人服の担当者が出世しやすい同社にあって、異例の抜擢でした。

社長就任後は、洗練されたファッションや商品へのこだわりを語る姿が人気を博し、雑誌やテレビに頻繁に登場するようになります。記者への対応も非常に丁寧で、出演を断らないのでメディアからの評判はよかった。

一方で、社内では、あまりにメディア露出が多いので、『外面がいいだけ』という評価もあった。『テレビに出る暇があったら仕事をしてくれ』と言われていたのです」